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◆◇◆ ☆建築雑知識 042号
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◆住宅性能表示の評価基準の「番外編」その6◆
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番外編も今回で6回目を迎え長くなりました。今回も外壁を続けます。
【コンクリート系パネル】
<PC版>
・PC版は(Pre-cast Concrete)の略で、予め成型したコンクリートの版です。
高度成長期に都市に人工が集中して深刻な住宅不足が発生しました。早期に何万もの
住宅を供給する必要があったのですが、現場施工のコンクリート造では早期に大量の
住宅を供給することは出来ません。
そこで当時の建設省は、北欧、旧ソ連で供給されていたPC構造の共同住宅に着目し
ました。PC構造は工場でコンクリートの版を生産し、その版を現場に持ち込み組立
てるシステムです。このシステムは工期がとても早く、当時の早期供給の目的を果た
しました。現在のプレハブ住宅のコンクリート版ですね。
PC版は外壁に限らず、床版、屋根版などに使われ、それ自体が構造材となって建物
構成しています。
PC版は蒸気養生をしますから品質は高く緻密なコンクリートの版になります。屋根
防水は、版の継ぎ目だけをアスファルト防水すれば良く、継ぎ目以外は緻密なコンク
リートの地肌で防水します。
PC版の肌は、水をもはじく若い人のピチピチした肌と同じですね。
・でも、こんなに優れたPC版も衰退してしまいました。何故だと思います?
理由は、画一な住宅に有ったのです。
システム自体が大量生産を前提としていたため、色んなタイプを造ることがコスト的
に出来なかったことと、版が構造体であったので簡単に間取り変更が出来ず、用意さ
れたのは公団でお馴染みの2DKや3DK、3LDKなどの数種類の住宅でした。
・衰退したのは人々の欲求に付いていけなかった為ですね。でも、このプレキャストの
技術はその後、色々なところで生きています。
<ALC版>
・ALC版は(Autoclaved Lightweight Concrete)の略で高圧養生されて造られた
重量の軽いコンクリートの板で、軽量気泡コンクリート版と言われています。
・原料はセメント、生石灰、珪石、アルミの微粉と水を良く練り合わせ、芯になる鉄筋
を組み込んだ型に流し込みます。
半硬化の状態で必要な長さに切断され、大きなオートクレーブと言う高温高圧蒸気釜
に入れられ養生します。
出来てきた製品が、良く目にする白くて表面に凹凸の穴のあるALC版です。
アルミの粉は、ALC独特の気泡を作り出す発泡剤として用いられています。
・PC版と違い構造材ではないので、別の構造になる骨組みに張っていく形になります。
ALC版は建物の内側から取付けるので隣地との隙間が少なくて済み、町中の狭い敷
地で多用されているほか、断熱性能に優れているため高気密、安定した温湿度を要求
する工場などに多用されています。
・製品の厚みは 75、100、125、150が有りますが、100mmが良く使われます。
長さは厚みの35倍までが限度で、50mm間隔で調整が可能です。
巾は600mmで統一されています。
・ALCも時代の要求に取り残されないように、ニーズにあった製品を色々開発してい
ます。それはALCの特徴である、シンプルさや版の継ぎ目地の多さを改良したもの
です。
a.表面に意匠的な凹凸を付け単調さをカバーしたもの。
b.ALCとタイルの馴染みは余り良くなく吹付けタイルが多いのですが、後貼りタイ
ルの欠点を無くしたタイル打込み製品。
c.ALC版と言うと目地の多さが特徴ですが、それがデザイン的に嫌われているとこ
ろでもあります。そのために、統一された巾600mmを1800mmに広げた製品。
d.厚みを50mmと薄くし、サイディングボード間隔で釘止め出来る木造用製品。
(薄いと断熱性能もその分落ちますので、別途断熱材は考慮する必要があります)
・張り方は竪張り、横張りの2種類があります。竪張りは住宅や事務所ビルに多く、横
張りは工場などに多く見られます。
理由は長さの制限が有るからです。階高が3m程度の住宅や一般建築では1枚のパネ
ルを上下で固定すれが良いのですが、階高の高い工場では1枚のパネルでは済まなく、
階の途中で継ぐことになり、工法的にもコスト的にも横張が優れている為です。
・ALC版は断熱性能が優れた製品として知られていますが、アルミの粉末で発泡した
気泡がその役目をしています。
空気層は最大の断熱材ですからね。
・ALCの建物で注意をしたいことは、窓や扉の開口部を設けるときは版を切り欠きま
すので、取付位置に制限があります。巾の半分以上を切り欠かないことです。
開口部の設定はALC版の割付をしっかりした計画し進める必要が有ります。
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★用語の説明コーナー★
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PC・・・本文で紹介しましたプレキャストコンクリートの他に、プレキャストコンク
リートの一部であるプレストレスト・コンクリートを指すことがあります。
これも予め工場で製作されますが、その際、中に入れる鉄筋を引張った状態
で固まらせます。
何故そんなことをするかと言いますと、例えば床版に上から荷重がかかると
床版は下に凹みます。その時版の下は伸びてますからコンクリートは引っ張
られてヒビ割れをおこします。引っ張る力に対抗しているのが鉄筋なのです。
この鉄筋に荷重を掛ける前から引っ張っておけば、たわみも少ない非常に強
い床版になるのです。
このやり方は、工場製品だけでなく現場でも行われ、鉄筋は普通の鉄筋でな
く丈夫なピアノ線を使います。
今日の用語の説明は、少し専門的すぎましたね。
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★編集あとがき★
「建築を愛する皆様」へ「建築雑知識」を送り始めてから、早1年が経ちました。
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編集発行:E&A建築企画 事務局
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