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◆◇◆ ☆建築雑知識 039号
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■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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◆住宅性能表示の評価基準の「番外編」その3◆
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<塗膜防水>
・前回、塗膜防水は改修工事に向いていると紹介しました。特にアスファルト防水で、
その上に保護モルタル(コンクリート)を打ってある場合には、その保護モルタルを
撤去するのは大変な仕事です。
そう言う場合に多用されているのが、塗膜防水です。保護モルタルをそのまま残し、
その上から防水を行います。
┌保護モルタル 塗膜防水層
┌保護モルタル _|________/
─────┼─── ─┴────────
━━━━━━━━━防水層 → ━━━━━━━━━━既存防水層
→
─────┼─── ─────┼────
└コンクリート床(スラブ) └コンクリート床(スラブ)
・アスファルト露出防水でも既存の保護モルタルの上に施工できますが、改修工事では
既に手摺りが付いていたり機械架台があったりで、シートが駒切れになりシートを重
ねて防水するアスファルト防水には不向きとなります。
その点塗膜防水は、芯になるシートを樹脂で塗り固める防水ですから、シートが駒切
れになっても樹脂で塗り固めるので大丈夫です。
一般的に塗膜防水は非歩行用ですが、特別仕様で歩行用も可能です。
<シート防水>
・塗膜防水は合成化学の膜を現場で塗り固めるのに対し、シート防水は工場で製品化さ
れたシートを貼る防水です。つなぎ目は接着材で貼り付けます。
マンションの廊下やバルコニーに塩化ビニールシートが貼ってありますが、これも一
種のシート防水ですね。
長所:厚みが一定していて安心であるほか、工期が早く済むメリットがあります。
短所:シート貼りなので細かな箇所は不向きで、下地の平滑さが要求されます。
<ステンレス防水>
・浴槽やプールにステンレスが多く使われていますね。水を一滴も漏らせない浴槽や、
プールに採用されているステンレスは、建物防水にもその威力を発揮します。
ステンレス防水はステンレスの薄板で屋上を覆い防水しますが、葺くのでなく継ぎ目
を溶接して水密な防水層を作ります。
ステンレスですから初期の費用は高い物になりますが、メンテナンスフリーであるた
め長い目で見た場合得です。
ステンレス防水は光を反射し廻りに影響を与えたり、熱膨張が大きく表面が歪んだり
しますので採用には注意が要ります。
<プラスチック防水>
・浴槽やプールに使われるステンレスが防水になるのだったら、ステンレスよりも良く
使われているFRP(強化プラスチック)はどうでしょう?
当然防水になります。比較的新しい防水ですが、仕様箇所・用途を選ばない幅広い防
水が可能です。
工法としては塗膜防水に近く、芯になるグラスファイバーを樹脂で塗り固める物です。
特徴は物理的に丈夫で強いことです。つまり、固くて強いことです。
例えばバルコニーにFRP防水を施工してあれば、鉢物の手入れ中に剪定ばさみを落
としてしまっても大丈夫。露出防水でも保護モルタル並の強度があります。
<モルタル防水>
・一応防水の仲間には入ってますが、屋上防水には不向きです。何たって、モルタルに
防水材を練り混ぜたものですから。
傘やレインコートに撥水材をスプレーしますね。その程度と見て下さい。
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【露出防水】
今まで色々な防水を紹介しましたが、これらは材料による分類でした。
「露出防水」は防水の状態を示すもので、防水層が表に現れている状態のものを全て言
います。
では、露出でないものはどのような状態かと言いますと、防水層の上に保護モルタルな
どで防水層を覆っているものを言います。
<保護モルタル>
正に防水層を守るためのものです。では、どのような物から守るかと言いますと、直射
日光、寒冷、飛来物、人物の歩行等です。防水層が露出していると、当然傷みは早いも
のです。
しかし、保護モルタルにも問題が無い訳ではありません。
まず、屋上に重たい加重が掛かることです。それよりも防水として問題なことは、一旦
雨漏れがしたとき、その原因箇所を見つけることは不可能なことです。
雨漏れは必ずしも雨漏れしている部分の上が雨漏れの原因箇所ではありません。雨漏れ
の箇所を探し出すのは大変ですが、防水層が隠れていると探しようが無く、もうお手上
げです。保証期間中で有れば当然遣り換えと言うことになってしまいます。
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【雨漏り原因】
雨漏れは原因を探すことは大変難しいことですが、次のことが考えられます。
1.露出防水で台風時などで飛来物により傷ついてしまう。
2.密着工法で躯体のクラックに防水層が付いていけなく破れる。
3.露出防水層が太陽熱で膨張し波を打ち、張り合わせた部分が口を開く。
4.押さえコンクリートが熱膨張で伸縮を繰り返し、防水層を痛める。
5.設計上の問題で、防水納めに無理が有る。
6.ドレンの詰まり。
7.シールに頼りすぎる。
※2.3.の問題は現在では絶縁工法と言う工法で解決しています。
絶縁工法は、躯体や保護コンクリートと防水層との間にクッション材を挟み込むこと
で、躯体や保護コンクリートのズレを防水層に影響させないようにしたものです。
※4.はアスファルト露出防水で良く見られることです。防水層と躯体の間の空気が膨
張し防水層を波打たせます。この空気を抜く新しい工法(脱気工法)で解決。
※5.は防水の立ち上がり寸法不足など。
※6.はドレン(排水口)をビニール袋などの飛来物が覆って流れが悪く、防水の立ち
上がり部分から漏れるケース。ドレンは最低2ヶ所は設けると問題なし。
※7.現在の建築は雨仕舞いの工夫をせずに、何でもコーキングやシールで済ませてし
まう。シールの耐用年数は長くなく、シールに頼った雨仕舞いは危険。
┌パラペット
┌─┴─┐
│ │
│ ┌─┘
│ ‖\_防水層を立上げ、上端をコーキングする。
│ ‖ コーキングは劣化で切れてる場合が多いが、普段の雨はパラペットの
│ ‖ アゴが出ているので漏水することはない。ドレンが詰まるとこの部分
│ ‖_______ まで水が溜まり、漏水することがある。
│  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
│ ┌──┬──
│ 梁 │ └屋上スラブ(床版)
│ │
<6.の解説断面図>
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【防水の寿命】
◎防水はステンレス防水などを除けば、建物の一生の間に何度か遣り替えなければなら
ない寿命を持った物です。
防水の保証期間は10年が一般的です。保証期間を過ぎると直ちに雨漏りがするとい
う代物でもありませんが、水道の水漏れと違いバルブを閉めれば簡単に止まると言う
ものでは有りません。
既に建物には人々が生活し物もいっぱい詰まっていますから、一旦雨漏れをすると被
害は重大です。
特に共同住宅では工事の承認を得るのに時間が掛かり、工事迄の間は被害に遭う住戸
は大変な思いをさせられます。
防水工事だけは支障が出てからの対応でなく、早めの対応が必要です。保証期間を目
処に改修計画を立てて下さい。
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★用語の説明コーナー★
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雨仕舞い・・・(あまじまい)と言います。雨に対する対策、仕組み。
基本的には雨は上から降ってきますから、隙間が有っても傘のような物
で隙間を覆って有れば、隙間には直接雨は入りません。
ところが風が吹いたり、現代の建物は機械換気で室内の圧力が負圧にな
っているため、水が上から下へ流れるとは限りません。そのために少々
風で逆流しても室内に入り込まないように水返し等の工夫をします。
こう言う工夫を総称して「雨仕舞い」と言います。
シールやコーキングなどは隙間そのものを塞いでしまいますから、手取
り早くて重宝されています。しかし、直接雨が掛かるところに用いるこ
とは、劣化して切れた場合は危険です。
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★編集あとがき★
住宅性能評価基準には外装材の項目は有りませんが、建物の重要な部分なので「番外編」
としてお送りしています。
読者の皆様から「○○について取り上げて欲しい。」と、ご要望が多数有りますが、全
体の流れから直ぐには扱えないこともありますので、ご了承下さい。
皆様のご要望にはいずれ必ずお応えしますので、取り上げたいご要望が有りましたら下
の事務局のアドレスまでE−mail下さい。宜しくお願いします。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
http://www.kentiku-kikaku.com/
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