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◆◇◆ ☆建築雑知識 031号
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■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(8)音環境−その3■
【音】その2は、吸音材が遮音にも有効だと紹介しました。その凄さはボード゛
と吸音材の組み合わせて、映画館をも間仕切る事が出来る程だと実例を上げて
紹介しました。今回は新聞記事に対するコメントと、注意事項をお届けします。
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読者の皆さんの中には既に読まれた方があるかと思いますが、新聞の囲み記事
に音環境に関する記事が有りましたので紹介します。
《防音市場成長に影》
−「性能表示」必須項目から脱落が波紋−
マンションのフローリング(木床)志向とともに急成長してきた「防音市場」
に異変が生じている。
出荷量に伸び悩みが出ているうえ、「住宅性能表示制度」の必須項目から防音
性能が抜け落ちたことで、業界では「防音軽視の風潮が強まるのでは」といっ
た観測も広がっている。
マンションなどの床材の主流がカーペットから木材へと移ったのは90年代半ば。
国内の防音床(直張り、二重床の合計)の出荷量は2000年で2,216万平方メートル
に達したものの、日本防音床材工業会によると「ここ数年は伸び悩みが目立つ」
という。
さらに、一昨年10月からスタートした家の品質の「物差し」となる「住宅性能
表示制度」が波紋を広げている。第三者機関が住宅の性能を評価してランク付
けを行う項目として「構造の安定」や「火災時の安全」など九つが定められた。
このうち「音環境」の項目だけが「選択事項」とされた。
まだ実際の影響は出ていないものの、建材業界では「建設業者は防音機能対策
を軽視するようになるのではないか」という懸念が高まっている。
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【解説】
記事の内容はマンションの床材の主流になっていた木床材が伸び悩んでいる。
さらに、住宅性能評価項目である「音環境」だけが評価必須でなくなったので、
防音対策が心配だ。・・・という内容ですね。
確かに、「音環境」は評価項目ではありますが、必ず評価しなければならない
項目では有りません。
では、何故「音環境」が必須項目からはずれたのでしょうか。実は、前回も
「音」は学問的にも未だ未知数の事が多いと書いた様に、評価そのものが非常
に難しいのです。
大まかな相対比較は出来るでしょうが、住宅性能評価のような点数を付けて、
ランクを評価するのには馴染まないのです。
学問的にもそういう状況にある「音環境」をあえて評価項目の中に加えたのは、
「防音対策軽視」どころか「重視」の姿勢の現れではないでしょうか。
建材メーカーさんは、心配せずに「善いもの」、「安いもの」を追求して下さ
い。絶対売れます。私たち設計者は善いものは使いますから。
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【お隣の声が筒抜け?】
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騒音と言うほどの迷惑な大音量でなくても、お隣の話し声が聞こえるのは
プライバシー上問題ですね。
ところが、戸建てでこれが結構聞こえるんです。
戸建てはマンションより音問題は無いように思われがちですが、窓を介して
周辺に漏れる音はマンションより遙かに多いのです。
★戸建ては、開口が多く開放的な作りであることに原因があります。
窓は遮音性能が最も劣る部分で、窓面積が大きければ大きいほど音は漏れて
しまいます。
敷地が広大で有れば距離による減衰が期待できるでしょうが、一般的な戸建
てでは減衰の期待は出来ません。お互いに窓を開ければ、お互いの話し声は
筒抜けと成ってしまいます。
一家団らんの楽しい笑い声は、ほのぼのとしたものですが夫婦喧嘩の争いご
とはごめんです。
戸建て住宅設計の時、隣家の窓の位置は考慮の一つですね。
それに引き替え、マンションでの隣家の声というのは殆ど聞こえません。
★マンションで隣と共有している壁のことを界壁と言います。
マンションは、この界壁1枚で仕切られているだけなので隣の声が聞こえそ
うですが、この界壁には開口部はないし、建築基準法で遮音性能の基準を設
けているので遮音性能は高く、両サイドは界壁でガードされている状態です。
もっとも、向かい合わせの隣棟の声が良く聞こえるのは、戸建てと同じ事
ですが、マンションの場合はお向かいとは随分離れていますよね。・・・
エッ、すぐ隣り?それじゃー気を付けなくちゃ。
★鉄骨造の賃貸マンションの場合は、界壁をコンクリートブロックやALC版
で作ることが多く、部材を積み重ねる工法なので隙間ができ易いのが欠点と
なります。
隙間が有ると遮音性能は極端に悪くなります。
★この界壁にコンセントボックスを埋め込む事があります。マンションはこの
界壁を挟んでシンメトリーのプランが多いので、お隣も同じ位置にコンセン
トボックスが埋め込まれることが有ります。
折角15cmのコンクリートの壁でも両側からボックスが埋め込まれたら、その
部分は実質 5cm足らずと言うことに成ります。これでは、この部分から音は
筒抜けに成ってしまいますよね。・・・コンセント1つでも慎重に。
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【もしも、貴方がピアノを弾くなら】
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★遠くからかすかに響くピアノの音。
何となくロマチックな感じですが、ピアノの音がお隣だったら話は別です。
ピアノの音は増幅されていますからかなりの音量です。
ピアノの音は弾いてる本人が思っているほど、周りの人には楽しくないので
す。音楽変じて即、騒音と成ってしまいます。
♪ 最低、窓は閉めて下さ〜い。
♪ できれば、雨戸も閉めて下さ〜い。
♪ 面倒だったら、ガラスを厚くして下さ〜い。
♪ できれば、二重サッシにして下さ〜い。
♪ ついでにお願い。
♪ もしも、貴方がピアノを弾くなら、防音を考えて建てて下さ〜い。♪
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【リフォームで出来るピアノ室】
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★ピアノを弾きたい、オーディオも存分に聞きたいし、カラオケだって楽しみ
たいですよね。
近所迷惑だからと言って好きなこともせずにいるのは、詰まらないです。
誰に遠慮することなく楽しめば善いんです。
でも、何の準備もなく楽しむと騒音となり隣近所とトラブルになります。
殺人事件にもなりかねません。
「では、防音を考えて家を建て直すか。」・・・こんな人は居ないよ。
☆でも、何も建て直す必要は有りません。1室だけリフォームすれば善いんで
す。部屋の中に部屋を作る。
ただ造ればいいと言うものではないけど、「音を漏らさず」、「音を伝えず」
に造るのがポイントです。
☆踊りとカラオケの好きなKさんは、自宅のマンションでも踊りの練習をした
いと願っておられましたが、足を踏みならすと階下に影響はないかと心配さ
れ遠慮されてました。
防音対策に床を浮かせて絶縁する浮き床工法を取り入れ、今では自宅の練舞
場で楽しんで居られます。
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前回号<音環境その2>で書きました【驚異的な独立3重壁】で誤解を当て
たようですので追加説明します。
前回号は3重のボード壁で映画館を分割した話でした。
Q「吸音材を挟み込んだボード壁では、事前に計算で証明できない。」にも関
わらず工事に踏み切ったのは何故か?出たとこ勝負の博打みたいな工事をし
たのか?との質問です。
A. 勿論博打みたいな事で工事を進めることは出来ません。遮音性能は計算で
出せるものは限られています。
大半の材料は遮音試験で出されます。計算で出せるように成った物も、幾度
かの実験で導き出されたデータが有ればこそなのです。
試験は音源側と受音側の2つの室から成り、2つの部屋の間に試験体を挟み
込みます。勿論試験体の間に隙間は有りません。音量計と受音計とで計測し
た差が遮音性能に成ります。
映画館で使用した構造は、こうした試験結果のデータを利用したものです。
ただ、試験体は実物より遙かに小さく、限られた大きさである事と、工事状
況が異なるので「現場で試験体と同じ物が作れるか?」との心配はありまし
た。
想定した遮音が出来たのは、設計監理がしっかり出来たためだと、自負して
おります。
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★編集あとがき★
世界が慌ただしくなってきました。
始まってしまった戦争ですが、後は早期の終戦を望みたいものです。
アメリカでフランスのワイン不買運動が始まったとか?アメリカらしくもないですね。
今日は、フランスのワインでも飲みながら、自由について、正義について考えてみた
いです。
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編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
http://www.kentiku-kikaku.com/
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