Engineer Group
メールマガジン
建築知識
 
019号



   ◆
  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            019号
 ◆◆◆◆◆
◆■ ■ ■◆           
 ■ ■ ■
 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
*******************************************************************************
◆住宅性能表示の評価基準(4)維持管理−その1◆


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
先週までは劣化の軽減に関することでは、建物構造の劣化を構造別に伝えてきました。
今週から取り上げる「維持管理」は主に設備配管に関することです。


◇【設備は何度か取り替えるもの】

建物は十数年経つと設備の痛みが気に掛かります。設備は絶えず水と接してますので、建
物躯体よりも寿命的には短く、10〜15年の間に必ず老朽化の影響が出てきます。
また、一旦支障が出ると水漏れ、汚水漏れになりますので大変な事です。

性能評価で高い評価を受けるかどうかは、最初の設計の段階から設備の取り替えを考慮し
て設計されているかどうかがで評価が変わります。
設備管は概して床下や壁の内側に隠されています。緊急の場合でも、時期を見てのリフレ
シュ工事でも、工事が遣りやすいかどうかで工事費は大きく変わってきます。
水漏れをし、その原因を調査しようとしても保守点検のための配慮がなされていないため、
高価な内装仕上げ材を取り壊さなければならなく、設備の補修よりも内装復旧の方が遙か
に高い物になった事例は数多くあります。

重要なことは、設備や設備機器は建物寿命の間に何度か取り替えなければならないことで
す。
また、設備管の維持管理は戸建ての場合と、共同住宅では比較にならないくらいの差が有
ります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇【共同住宅の設備管】

◆<水漏れは誰の責任?>

共同住宅は分譲であれ、賃貸であれ設備配管関しては難しい問題を抱えています。
まず、テラスハウス型住戸は別として、一般的に共同住宅は住宅が上下に幾層も重なって
成り立っているため、一旦水漏れを起こすと1住戸だけの問題では無いことです。
それと、1本に繋がっている管でも共用部と専用部では責任者が違ってくることです。

例えば分譲の場合、給水管は給水メーターから先の配管や設備は個人の財産です。と言う
ことはその維持管理は所有者の務めで、その部分が原因で水漏れをした場合は所有者が負
担することになります。

私も過去に水漏れには大失敗が有ります。
トイレが殺風景なので、トイレのタンクの注ぎ口の手洗い部分にプラスチック模造の草花
を飾りました。ところがプラスチックの葉が水の落とし口を塞いでしまったためにタンク
の手洗い部分から水がオーバーフローしてしまったのです。

タンクは水が溜まると浮き玉が上がり給水がストップする仕組みになっていますね。落と
し口を葉が塞いでしまったので、いつまで経っても水は止まらず、階下の人の悲鳴でやっ
と気が付いたというわけです。
この時は4階に住んでいましたが、高層マンションになればそれだけ被害も増えることに
もなります。

私の場合は設備配管の問題でなく個人の行為の過失によるものですが、これが設備配管の
老朽化によるものでも、その責任は管理責任者(所有者)が負うことになります。
共用部分が原因の場合はマンション全体で、専用部で有ればその所有者が責任を負うこと
になります。

賃貸マンションの場合は、共用部も専用部も大家さんが維持管理の責任があります。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆<共用部と専用部>

ここで、分譲マンションでの共用部、専用部を考えてみましょう。一般的に

専用部:住戸間の壁や外壁、建具に囲われた住戸部分のうち、内装材及び設備・設備機器。
    ・住戸間の壁、外壁、建具は共用部。
    ・給水、電気は住戸のメーターから先が専用部。
    ・配水管は住戸間を結ぶ竪管は共用部。竪管に繋がる横引き管は専用部。 

共用部:建物躯体、住戸以外のスペース及びその部分にあるもの。
    ・バルコニーは専用部の住戸外に有り共用部だが、専用使用権が有る。
    ・バルコニーに給水設備がある場合、場所は共用部ですが設備は個人メ−ターか
     ら先なので専用物。

※分譲マンションを大幅にリフォームする場合、竪管を除いて自由にプラン変更が出来る
 のはその部分が個人の財産だからです。
 住戸内を竪管が通っていますが、これは共用部分なので触れません。竪管が1本に集約
 されているより何本も通っている方が設備のためにはよいことですが、大幅なリフォー
 ムには障害になってしまいますね。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆<共用部の維持管理>

設備管は一生ものではないので、何れ取り替え工事をしなければなりません。
最大の問題がこの住戸内を貫通する竪管です。共用部分が専用部分を貫通していることに
問題が出てきます。
工事にかかりますと、水の使用制限、個人財産の内装材の破壊(勿論、元に復旧はします)
、工事の立ち会いなど住民の方に多くの協力を戴かないと出来ないことが多くあります。
特に住戸内に工事作業者が入りますので、工事の日程調整が難しくなります。

住宅性能評価ではこのような点を評価の対象としています。

1.内装材を痛めずに点検、補修、清掃が出来ること。
2.専用部分の住戸内に立ち入らなくても工事が出来ること。

具体的には、
1.点検口が最上階、最下階及び中間は2階置きか10m以内毎に設けられている。
2.共用廊下やバルコニー等、住戸内に立ち入らないでも保守が出来る位置に共用管がある。


※工事のことを考えると、住戸内はすべて専用管の横引き管にし、竪管は外部に面したメー
 ターボックスなどに通すのがよいのですが、横引き配水管は勾配が重要でむやみに横引き
 長さが長くなると勾配が取りきれなくなります。
 竪管をメーターボックスで横引きの管を短くすると、WC、浴室、洗面、台所などの水場が
 廊下側に寄ったプランになってしまい面白くないですね。
 保守点検も共用部から出来、水場の位置も住戸の中央内配置できるプランにするには、ラ
 イトコートやライトウェルが有効と考えます。
  

********************************************************************************
★用語の説明コーナー★    
**********************
ライトコート(光庭)・・・マンションの質の向上に考えられた外部吹抜け。
ライトウェル(光井戸)  共同住宅は端の住戸を除くと廊下側とバルコニーしか外部と接
             しません。そのために、住戸の中央部は暗く採光も通風も期待
             が持てません。このようなマンションの欠陥を改善するために
             通風と採光が可能にした吹き抜けを言います。

      ________       _____________________
            ┌MB
     共用廊下  ┌┴┐          共用廊下
      □──┬┬┼─□        □──┬──□┌───┐□─────□
      │洋 ├┤│浴│        │  │  ││   ││     │ 
      │  │├┴─┤        │洋 │洋 ││光 庭││     │ 
      ├──┤│洗面│        ├─┬┴┬─┤│   ││     │  
      ├──┤├──┤        ├─┴┐├─┤│   ││     │
      ├──┤│k │        ├──┤│玄│└─┬─┘│     │  
      │和 │└──┤        │  │├─□─┬┼──□     │ 
      │  │ D │        │和 ││浴│洗│┼┐       │
      ├──┤   │        ├──┘└─┴─┴┤勝手口     │  
      │  │   │        │     ┌──┤        │
      │和 │ L │        │ L D │K │        │
      □──┴───□        □─────□──┼──□─────□
        バルコニー         │  バルコニー │        │
      ─────────       ┴────────┴────────┴

      <従来のプラン>         <ライトコートを持つ戸建風プラン>
     
  ・住戸内に竪管を通さないには      ・ライトコートを挟むことで外部に接する
   外気に面する側が水場になり、      部分が多くなり、外部から保守できるPS
   個室が中央に来る。           が中央付近にも設けられ、プランのバリ
                       エーションが増え、住宅の質も高まる。
********************************************************************************
★編集あとがき★
前号までの「劣化の軽減」は躯体に関して、今週からの「管理維持」は設備に関してとなると
外装材については書くところが無いのに気が付きました。
外装については「維持管理」の後にお送りします。
*******************************************************************************
『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


前へ 次へ