Engineer Group
メールマガジン
建築知識
 
012号



   ◆
  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            012号
 ◆◆◆◆◆
◆■ ■ ■◆           
 ■ ■ ■
 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
*******************************************************************************
■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−その6■


【エッ!木で鉄を耐火被覆する?】・・・これぞ『建築(雑)知識』

世の中には常識では考えられない驚くような面白い話が有るものですね。
何と、火に燃える木が立派な耐火被覆材という話です。
木造建築物は先週扱いました防火構造でも、準耐火構造でも、まして耐火構造でも有
りません。立派に燃える構造です。その木が耐火被覆に認定されているのです???

耐火被覆材は火に弱い鉄骨などの構造材を火から守るものですね。ですから普通、耐
火被覆材はケイカル板やロックウール板、石膏ボードなどの不燃材で造られます。
ところが木でも木の性質を利用し、耐火被覆材として認定されます。

理屈はこうです。
木造の建物から火が出たとします。消火活動の甲斐もなく、あっという間に全焼にな
りました。現場には黒く焼け残った柱や梁が無惨に立ち残り、残骸からはまだうっす
らと煙が出ています。・・・(焼け跡を想像して下さい。)

木は燃えます。始めは炎をあげて燃えますが、    
しばらくすると木の表面は炭化します。       木木木木木 〜火 酸素
いわゆる炭ですね。この炭はもちろん真っ赤     木木木木木 〜酸素
になって燃えますが、一旦炭化すると木の時     木木木木木 〜火 酸素
と違い燃える速度は断然遅くなります。       木木木木木 〜酸素
これは、最初のうちは燃えるのに必要な酸素     木木木木木  火 酸素
の供給が充分ですが、そのうち酸素不足にな      ζ ζ ζ 酸素
り蒸し焼き状態で炭になるのです。炭になる     酸素 火 酸素  酸素
とますます奥の方まで酸素が行き渡らずに、      酸素 酸素 酸素
燃えるスピードは断然遅くなります。      
表面の炭は真っ赤になっていても、柱の芯は       ↓
木のまま状態が保たれています。

焼け跡の焼け出された立木も、もう枯れたか     炭炭炭炭炭   酸素
なと思っていてもやがて芽を出し、立派に再     炭木木木炭
生したのを経験されたことは有りませんか?     炭木木木炭 ガ
表面は炭となり犠牲になっても、中の若い組     炭木木木炭 │    酸素
織を守っていこうとする生き物の生への執着     炭炭炭炭炭 ド
でしょうか。木は見事に立ち直ります。        ガード

                         酸素      酸素
この木を耐火被覆材として鉄骨に巻くと、最
初は燃えますが炭となって火からガードし、
中の鉄骨を守ります。                  酸素
ガードするには厚ければ厚いほど有効です。
普通の耐火材は2.5cm〜3cmで2時間耐火にな
りますが、木製の場合は最低5cm〜6cmは要り
ます。

実験の結果、ある程度の厚みが有れば木でも立派な耐火被覆材になることが実証され、
(株)ジーシー大阪営業所のビルに世界で初めて採用されました。
 http://www.nopa.or.jp/office/nikkei/14/best/_14_07/Another%20Window/14_0906.htm


メリットは、従来の耐火被覆材では被覆材の上にさらに下地材を組み、その上に仕上
げ材を設けていたのを、この方法では耐火被覆材をそのまま仕上げ材とすることが出
来る点です。上記のURLでお分かりのように、ウッディーな内装を希望されている
場合は有効ですね。
コスト的にも間伐材を使用することも出来ますので、たとえ厚さが5cmの板でもそん
なにコストアップにはならないと考えられています。
それにしても常識を覆す発想で開発された、建築家、技術者に敬意を払いたいですね。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【毒を持って毒を制す】

木製耐火被覆のように、一見不都合なものが有効なものは他にも有ります。
金属は水、空気に触れて錆びます。錆びると表面に酸化被膜(錆のこと)が出来ます。
一旦膜が出来るとそれ以上の錆はなかなか進行しないのです。これは木が一旦炭化すると
奥の方まで酸素が供給されず火災の進行が遅くなるのと理屈は同じですね。
「錆が錆を持って錆を制す。」

身近なところで、アルミ建材が有ります。
アルミは鉄と違い錆びないと言われていますが、実は表面は酸化膜で覆われてそれ以上の
錆を進行させ難くしているのです。もっとも、この酸化皮膜は自然に発生させるのでなく、
工場で管理されて電気的に造り出されています。この電解アルミ皮膜のことをアルマイト
と言いますが、これも日本で発明されたものなんですよ。

次にステンレスです。ステンレスはステンレス・スチールと呼ばれ、鉄とクロムの合金で
あることは良く知られていますが、合金にすることで錆びにくくなったとお思いでしょう?

正確には錆びない合金になったのでなく、空気に触れるとすぐに強力な酸化皮膜を表面に
造る性質を得たのです。この酸化皮膜は剥がれてもはがれても、すぐに空気中の酸素と結
びつき、新しい皮膜を造ります。
それにこの皮膜は他の皮膜に比べ断然丈夫な膜なので、ステンレスは絶対錆びないとまで
言われています。

絶対錆びないと思われていたステンレスでも錆びたのを経験されたことはありませんか?
ステンレスはクロムの含有量の多少や、更に他の金属と混ぜることでいろいろな性質を持
ちます。台所の流しのステンレスは曲げ加工しやすい性質を優先しますので、若干塩には
弱いところがあります。
醤油や塩が付いてそのままにしておくと錆びてしまいますので注意が必要です。


****************************************************************************
★用語の説明コーナー★
**********************
ロックウール・・・人工鉱物繊維(断熱材や保温剤として広く使われる。)
(岩綿)     岩綿に似た製品で石綿(アスベスト)が有ります。石綿は発癌物質と
         して有名になりましたが、これとは違いますので安心して下さい。
         
        ●石綿は蛇紋岩系の天然石から採取され、太さが 0.02〜0.03ミクロン
                 長さが1〜20ミクロン(1ミクロンは1/1000mm)の細かい物質です。
         耐熱性、耐薬品性、絶縁性、耐摩耗性、防音性、抗張力性があり、尚
         かつ価格が安い事もあり建材などに広く使われていました。
         
         アスベストは発癌物質のため一般では使用が禁止されていると認識さ
         れているようですが、完全禁止でなくある程度の含有量に押さえれば
         製造は可能なので未だに建材として出回っています。

         鉄骨への耐火被覆は全面禁止でロックウールに置き換わっていますが、
         古く使われたアスベストはそのままになっていますので、鉄骨の解体
         現場は要注意です。
         
******************************************************************************
★編集あとがき★
スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、いや「インターネットの秋」現代はそう呼ば
れるかも知れませんね。
秋の夜長をインターネットで楽しむのも現代風ではないですか。
******************************************************************************
★編集あとがき★
先日、大阪を代表する法善寺横町の商店が、隣接する「旧中座」の解体工事で、管の
中のガス抜き中に突然爆発があり、延焼で焼け落ちてしまいました。
独特の雰囲気を持った古い通りなので、大阪の人々に惜しまれています。
******************************************************************************
『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


前へ 次へ