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建築知識
 
008号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            008号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−その2■


【火のないところに煙が立つ】

 多くの火災はタバコの火やコンロの火がほかの物に燃え移り、そこから予期
 しない火災になってしまいますね。
 ところが、火が燃え移らないのに火災になる例があるのです。

「台所で火を使ってないのに、どこからか煙が出てきて火災になった。」
 と言う例です。
『火種がないときに火災になると、まず思い浮かべるのが漏電ですね。
 でも、出火場所に配線もなく漏電も考えられない時に、低温着火の可能性が
 あります。

 台所のコンロは壁際に設けられているケースがほとんどですね。コンロの横
 の壁がベニヤや可燃性の物でしたら、すぐにコンロの火で燃えてしまいます。

 だから、台所の壁はコンロの火が燃え移らないように、ステンレスやタイル
 又は不燃ボードなど火にさらされても燃えない物で作られています。

 従来の考えでは、表面の仕上げ材が燃えなければ火災にならないと考えられ
 てきました。しかし、ステンレスの裏側では、コンロの熱が蓄積され高温に
 なってしまいます。
 このためにベニヤや木製の下地材は、徐々に水分が奪われて炭化していきま
 す。一度炭化してしまうと直接火にさらされなくとも、約 100℃の低温でも
 着火してしまうのです。これが『低温着火『と言うものです。

 このような例は、共同住宅やガスコンロが出始めた初期の頃に多く報告され
 ました。
 そのために、表面の仕上げ材だけを不燃材にするのでなく、下地も不燃材と
 するようになったのです。
 ですから皆様の台所の壁の下地は、ケイ酸カルシューム板(通称ケイカル板)
 やプラスターボードなどの不燃材が使用されていると思います。

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【下地も不燃材なのに低温着火?】

 下地を不燃材料で作った物にも低温火災の報告があります。
 不燃材であるプラスターボードが、長年のコンロの熱でプラスターボードの
 中の結晶水が蒸発し、本来の遮熱性を無くし木造下地を炭化させたと言うも
 のです。

 低温火災が頻繁起きてるわけではありませんが、壁が長年熱せられることで
 低温火災が起きます。大きな鍋を使うときは、壁と反対側のコンロを使うな
 ど台所の壁が直接炎にさらされることは避けたいですね。

 低温火災は台所のコンロの廻りだけとは限りません。ダウンライトの廻りで
 も起こります。
 ダウンライトは天井内に埋め込まれた筒状の照明器具ですが、電球に白熱灯
 が使われます。白熱灯は蛍光灯と違い熱を発生しますので、照明器具が相当
 熱くなります。
 この照明器具が天井裏の木下地に接したり、近かったりすると木下地が炭化
 し低温火災につながるのです。
 メーカーのダウンライトの収まり図には、下地との離隔距離が明記され注意
 促してます。

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【建物の燃えにくさ】


 童話に3匹の子豚の話がありますね。「3匹の兄弟がそれぞれ家を造ること
 になり、長男は藁の家を造り、次男は丸太の家、三男はレンガの家で造りま
 した。・・・
 長男と次男は狼に食べられ、三男は知恵を出して狼を撃退しましたとさ。」
 こんな話だったと思います。

 童話のように長男と次男が怠け者であったかどうかは別として、この建物が
 燃えにくさの点でどうだったかは一目瞭然ですね。
 「三匹の子豚」の兄二人の家はどう見ても、内からの火にも外からの火にも
 丈夫には見えません。

 この「燃えにくい」には2通りあると考えられます。
 1つは、万が一出火した時、簡単に燃え広がらないこと。・・・内装制限
 2つ目は、隣家からの火災に対して燃え移りにくいこと。・・・延焼防止

 度々引き合いに出しますが、建築に関する法律の建築基準法では、内からの
 火に対する規制は「内装制限」と言う言葉で規制しています。


内装制限・・・(以下の項目に該当するものは、壁、天井の室内に面する部分
        の仕上げを防火上支障のないようにしなければならない。)

1.不特定多数が利用する特殊建築物(学校、病院、共同住宅、百貨店、旅館)
2.階数が3以上である建築物
3.開口部のない居室(住宅では開口部の無い居室は禁止されています。)
4.延べ面積が3000uを越える建築物
5.浴室、調理室等火を使用する器具を設けたもの

▲住宅の場合、まず共同住宅の場合は1.の用途で対象となり、戸建ての場合
 は最近増えてきた3階建ての住宅は、階数で対象となります。
 その他の建物でも、5.の火を使用する部分は対象となりますから、台所の
 内装制限は最低必要です。
 対象となっても、規模など緩和規定が色々あり、必ずしも内装制限でガンジ
 ガラメと言うわけではありません。
 対象になっていても場合によってはウッディな壁も可能です。

▲内装制限の基本は燃えない建物を造るのでなく、万が一火災が発生した時、
 フラシュオーバーを防ぎ、無事に逃げおおせるだけの時間を稼ぐ目的から決
 められています。
 ちなみに、床材は内装制限の対象とはなっていません。床が燃えだす頃は、
 既に皆逃げているだろう。と考えるからです。

▲色んな建物で、壁や天井の隅に小さなシールが貼ってあるのを見たことは有
 りませんか?
  それは内装制限された建物で、不燃材や準不燃材、難燃材を使用しているこ
 とを証明しているシールです。気が付かれたら一度表示を確かめて見ては。

▲内装は火災のことだけで決めるわけではありませんが、規制対象でなくても
 燃えにくい材料を使っておく方が、万が一の場合でも最小の被害で済みます。

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【炎より怖い有毒ガス】

 この前起きた新宿での大きな惨事は皆様の記憶に新しいことと思います。
 火災の規模は差ほど大きくはなかったのですが、多くの犠牲者を出してしま
 いました。
 大半の方が逃げ場を失うと言うより、短時間の内に有毒ガスを吸い込み死に
 至ったとの見方があります。
 有毒ガスは物が燃えるとき発生する一酸化炭素の他に、シアン化水素(青酸
 ガス)が発生したととみられ、シアン化水素は新建材やアクリルやナイロン
 製のものが燃えると発生すると言われています。

 このように火災は逃げれば命まで落とすことはありませんが、有毒ガスは逃
 げることさえ出来ずに命を落とすことになる怖い存在です。生活の廻りには
 有毒ガスを出す物があふれています。身を守るにはまず、火を出さない事が
 一番です。
 寝タバコや火を付けたままの給油、鍋の火を付けたままの長電話、どれも注
 意して防げることばかりです。

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★用語の説明コーナー★
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フラッシュオーバー
      ・・・室内が火災になると、初期の段階は炎が次から次へと移り
         広がっていきます。
         この時、物が燃える時に発生する可燃性ガスが室内に充満
         します。可燃ガスは一定の温度、濃度、空気量等の条件が
         そろうと爆発的に一気に部屋中を炎で包む火災になります。
         このような爆発的火災をフラッシュオーバーと言います。

         火災になってまだ荷物を運び出せると思っていても、次の
         瞬間には炎に包まれることになりますので、一旦逃げたら
         決して室内に戻らないことです。

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★編集あとがき★
少し涼しくなったら夏が恋しくセンチになったり、暑さがぶり返せばウンザリ
で、身も心も気候の変動に振り回されています。
暑さも当分続きそうです。皆様も身体にはくれぐれもお気を付けて下さい。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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