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◆◇◆ ☆建築雑知識 005号
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■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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前回取り上げました「この建物大丈夫?」と言う漠然とした質問は、大抵の場合は
「地震の事は置いといて、単に建物を使用していて潰れないか?」と言う質問のよ
うですね。地震は不可抗力と言うことで、その時は諦めると言うことでしょうか?
ここで「建物の大丈夫?」をもう一度整理したいと思います。
■住宅性能表示の評価基準 (1) 構造の安定−その3■
1.建築確認申請をされた正規の建物の強度は、建築士がその時の基準に従って設
計し、審査機関で公に強度が確認されている。
2.建物の基礎、杭、壁、柱、小屋組、土台、筋交い等斜め材、床板、屋根版、梁
桁などの横架材は、次の力や重さを支えきれるかで決められる。
ア.建物の自重及び積載荷重
イ.積雪荷重
ウ.風圧力
エ.土圧力、水圧力
オ.地震力
3.積載荷重は建物の用途によって、基準が変わる。
(建物の用途変更をする時は、確認申請し構造チェックなどを受ける。)
4.建物の強度の基準は時代と共に変わる。
(地震以外は学問的に既に安定しているため、そんなに変わることはないと思う。
地震については地震規模の実験が簡単に出来ないため、実際に起こった大地震
が構造力学の実験になっている状態で、まだ未知の部分が残されている。)
5.地震の分野はまだ未知の分野と言っても、現在の「新耐震構造基準」基準は相
当に信頼が置ける。(1981年、昭和56年以前は旧基準)
6.基準以外の性能を必要とするときは、特別に構造チェックが必要。
(特に重たい物を載せるときや、振動する物を使用するとき)
※正規の手続きをされた建物は、建築士や公の機関で構造チェックを行いますので
普通の使い方では大丈夫と言うことです。
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【確認申請をした建物が潰れた!?】
今、正規の手続きをした建物は「大丈夫。」と言ったばかりなのに、こんな題を付
けるのは心苦しいのですが、実際に有ります。
***ここからが一般の人が目を○●させる話です。*******************************
地盤に対することです。
建物は地盤の上にのっかって安定してますが、この地盤が底なし沼のような地盤だ
ったらどうなるでしょう?・・・ 勿論、ズブズブと沈んでしまいますね。
建物が沈まないでおれるのは、地盤に建物を支えるだけの反発力が有るからです。
その地盤の反発力は地質で異なります。
ニューヨークのマンハッタン島は岩盤で有名ですね。岩盤だから世界貿易センター
のような摩天楼の建設が可能なのです。
では、「あなたのお家の地盤は?」って聞かれてもわかりませんよね。その土地に
昔から住んでいる人でしたら、「昔この辺は、○○だったから余り良くないなぁ」
とか、「この辺は山を削って出来た所だから、地盤はいいよ。」と大体のことは分
かると思います。でも、分からなかったらどうします?
実は、建築基準法では「地盤の許容応力度(反発力)を決めるときは、地盤調査を
行い決めなさい。」としています。
「そうか、地盤調査をして決めているのか」と安心しないで下さい。実はこの後に
こんな言葉が続くのです。
┌───────────────────────────────────┐
│「ただし、地盤の許容応力度については、地盤の種類に応じて、次の数値に │
│ 依ることが出来る。」 │
│ │
│ 岩 盤 100トン/u │
│ 固定した砂 50トン/u │
│ 土 丹 盤 30トン/u │
│ 密実な礫層 30トン/u │
│ ・ │
│ ・ │
│ ・ │
│ 堅いローム層 10トン/u │
│ ローム層 5トン/u │
│ 粘土質地盤 2トン/u │
└───────────────────────────────────┘
この基準法の文章を見てどう感じました?
「岩盤は1u当たり100トンももつのか。それに比べてローム層は、5トンしか
ねぇや」なんて数字を気にしないで下さい。数字を知って貰うために紹介したわけ
ではないのです。
問題にするのは、建築基準法では、本来は地盤調査しなさいとしていますが、但し
書きで簡易法でも良いとしている点です。
地盤調査には、〇十万と言う費用が掛かります。
法律を作る段階で、国民が家を建てるために地盤調査に多額の出費を強いるのは好
ましくないとして、緩和規定を設けたものと思います。
以前の号で「基準はその時その時の国力、民力、技術力で決まります。」と書きま
したが、正にこの法律は民力を反映してのことと思います。
では、この簡易法は当てにならないかというと基本的には信頼される数値です。
しかし、この数値は安定した状態での数値ですから、一度掘り起こされ埋め戻され
たものにはこんな数字は出ません。
そんな時に簡易法では危険です。確認申請を出されても、個々の特殊な事情までは
審査しないからです。運が悪ければ不動沈下と言うことも有り得ます。
建築士が地盤調査や地盤改良を進めた場合は費用を惜しまないことですね。
建て売りの場合は、この辺の所をどうしているのでしょうね。安ければよいと考え
る業者では簡易法でしょうかね?。
もっとも、実際の確認申請で簡易法で済むのは戸建て住宅ぐらいで、他の多くの建
物には地盤調査を義務付けていますから、自然災害がないのに建物が傾くと言うこ
とは無いと思います。
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★用語の説明コーナー★
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ローム層・・・関東一円に広がる関東ローム層が有名ですね。太古の昔富士山が噴
火や、火砕流として降り注いだ火山灰で出来た地層のことです。
火山灰と聞くと白か灰色を思い浮かべそうですが、鉄分が酸化して
赤くなった赤土です。
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★編集あとがき★
住宅性能表示は、建築基準法で定めた内容よりも上のレベルで等級を決めています。
現実は建築基準法にも達しない施工に問題が有りますので、性能表示を詳しく紹介
することよりも、性能表示の項目に従ってそれに付随する興味深いこと、注意点な
どを紹介していきます。
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が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
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