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建築知識
 
003号



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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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今回から具体的に住宅性能評価基準の中身を紹介しながら、住宅の性能に関する
雑知識を紹介します。性能評価基準は9項目で評価されることは前回紹介しました。
今日は第1番目の「構造の安全に関すること」から始めます。
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■住宅性能表示の評価基準 (1) 構造の安定−その1■

【性能評価は建築基準法以上のレベル】

構造の安全基準というと、「構造の欠陥=欠陥住宅」と言うことで、皆様が一番関
心の有る内容では無いでしょうか。

欠陥住宅でテレビなどで紹介される内容は、水平でなければならない床が「ビー玉
を床に置くと勝手に転がる」、「家が傾き建具が閉まらない」と言った構造に関す
る内容が多いですね。

そもそも、こう言った類の欠陥は、建築基準法さえ守られていない程度の低い内容
です。住宅性能評価では、建築基準法も満たさない内容は論外となってます。
評価には等級で表されますが、建築基準法を満たした内容で最低の等級1となって
います。

ですから、性能評価を受けた住宅は、評価を受けたこと自体で基準法以上の内容が
証明され、安心して暮らせる内容となっています。

読者の皆様の中には、「えっ!基準法を守れば欠陥住宅が無くなるのだったら、性
能評価は何のための基準?」と思われるかと思います。

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【評価基準】

欠陥住宅の概念は、「社会通念上の家としての機能」を果たせないものを言います。
社会通念上の最低の機能を守らせる法律が「建築基準法」と言えます。

建築基準法は義務規定ですから、基準が高ければ良いと言うものでもないですね。
基準が高ければ建物を建てようと思っていても、コストもかさみ簡単に建てること
が出来なくなってしまいます。
ですから、その時の国力、民力、技術力に有った内容で決められたもので、必要最
低限の内容と考えた方が良いでしょう。

一方、性能評価基準は義務規定では有りませんから、安全をより確保した基準にな
っており、建築基準を最低ランクとしてスタートさせています。

では、建築基準法がどの程度の内容になっているかは、一般の人の認識とズレが多
くあります。
建物には雨露をしのぐ屋根が有り、床があります。屋根や床を支える根太や垂木、
梁、柱はこれらを支えるだけの強度が必要になりますが、それだけでは充分ではあ
りません。
我が国は、まず地震国であり又、台風も良く通過しますから、単に建っているだけ
でなく、揺すられても持ちこたえるだけの強度が欲しいところです。
これらの我が国の状況を考えて建物の構造基準は定められています。ですから地震
もないのに建物が傾くなんて論外ですね。

では、どんな地震が来ても大丈夫かと言うとそんなことは有りません。基準はその
時その時の国力、民力、技術力で決まりますから、絶対と言う程の高い水準では有
りません。
まずこの事を知って下さい。そうでなければ性能評価が基準法以上を前提としてい
る意味がないのです。

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★年々変わる構造基準★

建築基準法の構造基準は、これまでに大きな地震の起きる度に何度も改訂されてき
ました。被害にあった方には申し訳ないのですが、地震は自然が起こす大きな実験
となっています。被災調査から構造学上の新たなテーマが与えられ、各構造学者や
技術者はテーマ解決のため検討を重ね、その成果が次の基準となって来ます。

まだ記憶に新しい神戸淡路大震災でも多くの犠牲者が出ました。多くの家や建物、
そして高速道路までもが倒壊する大きな地震でしたが、その殆どが当時の構造基準
以前の基準で建てられた古い建物や構築物だったのです。

1981年(昭和56年)以降は「新耐震設計基準」が構造基準でした。「新耐震設計」
で建てられた建物は、損傷はあったものの倒壊は皆無でした。
残念ながら、無くなった多くの方は基準が変わった事も、お住まいが安全でない事
もご存じでなかったものと思います。

法律では、基準が変わっても既に有る建物にまで新しい基準を義務づける事は酷だ
として、古い建物には適用されません。と言うことは新しい建物には最新の基準で
安全を確保されるのに、古い建物は安全でないと分かっていても放置されている状
態です。
この事を皆さんご存じでしょうか。行政も何時くるか分からない地震に対して、新
基準を義務づける勇気は持ってないのでしょう。
でも、行政としては、古い家を「新耐震設計基準」に合わせて補強改修するしない
は個人の判断に任せるとしても、もっと「旧耐震設計基準の建物は安全でないと知
らせる義務はあると思います。

折しも、9月28日の新聞やテレビで「南海地震や東南海地震が30年内に起きる
予想を50%」と報道していました。
以前から言われてはきましたが、30年内と聞くといよいよ、と言う感じですね。

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【等級基準】

では具体的な評価基準はと言うと、次の6つの基準から構成されています。

1)耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止)
2)耐震等級 (構造躯体の損傷防止)
3)耐風等級 (構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)
4)耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)

5)地盤・杭の支持力及び設定方法
6)基礎の構造方法及び形式

*(1)〜(4)は等級で表示されますが、(5)(6)の項目は住宅の性能を等級
で評価・表示する当システムにはそぐわないけど、特に消費者のニーズが高く重要な
ものなので、消費者が判断する際に参考となるように情報を提供しようと、あえて項
目をに加えたようです。ですから等級表示でなく、事実を記載する形になります。


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★用語の説明コーナー★
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構造躯体・・・構造上主要な部分で、建物の自身の重みや中に納める荷物、積もった
       雪の重み、風圧、土圧、水圧、地震などの振動や衝撃を支えるもの。
      (基礎、杭、壁、梁、柱、小屋組、土台、筋交い等、床板、屋根版など)


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★編集あとがき★
8月に入ると朝晩は少しは過ごしやすくなりますかね。それでも日中は暑い日が続きます。
車中に幼児残しや、水の事故にはくれぐれも気を付けて下さい。

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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                     URL: http://www.kentiku-kikaku.com/                


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