~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H24.7.30記》
平成24年度「設計製図対策−1」を1月17日にお送りしたから、半年以上も経過してしまいま
した。この間「対策−2」を楽しみに多くの方が訪問されたにもかかわらず、「対策−1」止まりに
なっていたことをお詫びします。
既にH24年度の製図課題が発表されました。今後は課題に応じた内容をお送りしますが、今回は
これまでにお送りしようとまとめていた設計製図の基本事項をまとめてお送りします。
内容的には、各受験指導校で指導している事とほぼ同じと思いますが、基本事項としてお送りします。
受験指導校に通っている皆さんも、もう一度復習のつもりで読んでみてください。
■ 設計製図の進め方−1
◆<試験の仕組みを理解する。>
設計製図の試験はわずか 6.5時間の勝負です。通常の業務からすると考えられないほどの短時間
の中で作図まで完成させなければならない。
その為には、試験の仕組みを良く理解する事です。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず!」
そして、それに合わせた戦略が必要です。
1.設計製図の手順
a.課題文の読み取り。(要点摘み出しから構想練りまで)
b.エスキス (間取り)
c.計画要点の記述 (8〜10項目の記述)
d.作図 (配置兼1F平面、2F平面、断面、梁伏図、面積等)
e.見直し
2.時間の割り振り
下の表は、一般的な時間割り振りを示す。
実際の試験では、要求されている書き込み量を冷静に判断して、時間割を決めたい。要求面図は年に
よって違ってくるし、備品の記入など作図に手間の掛かるものがどれだけ有るかがポイントになって
くる。
0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5
┣━━╋━━┷━━┷━━┷━━╋━━┷━╋┷━━┷━━┷━━┷━━┷━━┷╋┫
課題文の エスキス 計画要点 作 図 見直し
読み取り (計画作業) の記述
(30分) (2時間) (45分) (3時間) (15分)
エスキス時間の2時間はしっかり確保して考えたい。エスキス時間を圧縮するのは避けたいものだ。圧
縮するなら作図だろう。昨年の標準解答例から内容さえ大きく外していなければ、作図表現方法は少々
省略しても合格レベルと考えられる。
作図は手の抜き方は色々あるので、短縮は可能だ
が、稚拙な案は後戻りできない。たとえ2時間をオーバーしたとしても、決して諦めないこと。合格、
不合格の本当のポイントは、合格するぞ!という執念の差に有る。
作図時間がなかなか3時間を切らない人は、次の点をしっかり頭に入れて臨んで欲しい。
◆作図時間の短縮法
1.エスキスを細部までしっかり固めること。
2.作図に取り掛かったら、決して計画変更しない。エスキス案をそのまま清書する。
3.作図中は一息入れる間など亡い。作図のリズムを日頃から身体に刻みつける。(チンタラしない)
4.消しゴムを使わなく良いように、慎重にエスキスを写し取る。
5.補助線は、間取りの芯くらいに留め、極力引かない。壁厚など芯を中心に左右又は上下に等間隔
で引けるよう、日頃から意識して線を引く。
※上記の事を修得するには、数多くの枚数を書き上げることしかない。理解すると言うよりも身体に
叩き込む感じだ。高い授業料を払って指導校に通うメリットは、強制的に枚数をこなすシステムに
あり。
◆設計製図の手順
a.課題の読み取り。
A3版にびっしかかれた文章を、一通り目を通すだけでも10分は軽く掛ってしまう。
しかし、目を通しただけでは頭には何も残らない。まして、試験という緊張の場では、頭の中は真っ
白で、目は文字を追ってもちっとも頭に入らない。だから、読み方には工夫が必要になってくる。
イ.まず、課題文の構成を知り、課題文に慣れること。すなわち、課題を数多くこなすこと。
課題文の構成・・・(赤注は筆者の注釈)
実際の課題文は各年度のチャレンジ奮闘記を参照。
┌───────────────────┬───────────────────┐
│タイトル │3.その他の施設・・・(注6) │
│T.設計上件 │ ・建物以外の屋外要素の条件 │
│ 建物の役割や建設の目的が述べられて│ 屋外広場など │
│ いる。・・・(注1) │ 駐車場条件 │
│ 特に要求している事項 │ 自転車置場の条件 │
│ @・・・・ │ 屋上禄地等 │
│ A・・・・ │ │
│ 1.敷地及び周辺状況・・・(注2) │4.計画に当たっての留意事項 │
│ ・東西南北の道路と周辺状況状況 │ (1) 建築計画についての留意点 │
│ ・敷地の高低差の状況 │ (2) 構造計画についての留意点 │
│ ・用途地域、防火指定 │ (3) 設備計画についての留意点(注7)│
│ ・地盤、インフラ状況 │ │
│ │ │
│ ││ │U.要求図面等 │
│ ─┘└─────────── │ 1.要求図面・・・(注8) │
│ ─┐┌─────────┬─ │┌─────┬───────────┐│
│ ││ │ ││図面・縮尺│ 特記事項 ││
│ ││ 敷地&周辺の略図│ │├─────┼───────────┤│
│ ││ │ ││1階平面図│ ││
│ ││ │ ││ 兼配置図│ ││
│ │├─────────┘ ││ │ ││
│ ││ │ ││
│ 2.建築物 ││2階平面図│ ││
│ ││ │ ││
│ ・構造・階数等(注3) ││基準階平面│ ││
│ ・床面積の合計 │├─────┼───────────┤│
│ ・所要室 ││断面図 │ ││
│ ││ │ ││
│┌─┬──┬──┬─────────┐│├─────┼───────────┤│
││ │室名│面積│ 特記事項 │││△階伏図 │ ││
│├─┼──┼──┼─────────┤││ │ ││
││部│ │ │ ││└─────┴───────────┘│
││門│ │ │ ││ │
│├─┼──┼──┼─────────┤│ │
││部│ │ │ ││ │
││門│ │適宜│(注4) ││ │
││ │ │ │ ││ │
│├─┼──┼──┼─────────┤│ │
││部│ │ │ ││ │
││門│ │ │ ││ 2.面積表 ・・・(注9) │
│├─┼──┼──┼─────────┤│ │
││共│ │ │ ││ │
││用│ │ │ ││ │
││そ│ │ │ ││ │
││の│ │ │ ││ 3.設計の要点・・・(注10) │
││他│ │ │ ││ │
│├─┴──┴──┴─────────┤│ (1) 建築計画についての留意点 │
││上記の室に関連して必要と思われる室││ (2) 構造計画についての留意点 │
││その他必要と思われる室等は、適宜計││ (3) 設備計画についての留意点 │
││画する。(注5) ││ (4) 環境負荷低減について配慮したこと│
│└─────────────────┘│ │
└───────────────────┴───────────────────┘
ロ.文章の中で重要な部分にアンダーラインなど印を入れて頭に叩き込む。
・・・このとき注意をしたいことは、アンダーラインやマークの仕方だ。
慣れない内は、文章全てが重要に思えてしまうためマークだらけになり、どの部分が重要
か分からなくなってしまう。
ラインやマークの工夫をしよう。これは、自分の遣りやすい方法を自分で探すしかない。
参考まででに、私のやり方の要点を述べさせて貰うなら、
@ 2段階マーク。
・まず、エスキスに必要な事項。
・次に、エスキス終了後に、作図に必要な事項。
ただし、文章は、T.設計条件から、U.要求図面等、V.計画の要点まで通して読む事。
UにもVにもエスキスに必要な事項が記述されてる場合が多く、最初からマークする。
A 要点がすぐに探せるマーク方法。
一度には頭に入らないから、何度も読み返すことを前提に見易く探し易いアンダーライン、
マークの仕方。
・文章に長々と引くのでなく、ピンポイント的に言葉や数値にマーク。
・内容によってマークの仕方を変える。
a.アプローチや位置関係の記述 →文章の冒頭にレッドマーク ●
b.重要な要素 →アンダーライン ───────
c.面積や台数などの数値 →〇囲い、又はマーカー
d.その他の施設は文字の羅列で見辛い→駐車場、広場などの名称を□囲い又は
マーカー。
e.内容によって色分けをする。 →天井高さ、吹抜など垂直構成に関する事
はブルーマーカーとか色を変える。
ハ.課題文は何度でも確認すること。
・・・エスキスで行き詰まった時などに、もう一度見直すと条件の読み違いを発見する事が多い。
これだけの長い文章を一度に頭に入れようと思っても入るわけがない。
ニ.読みながら、重点事項は視覚に訴えるように書き出す(メモる)。
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◆課題文の構成の注意点
注1.冒頭の数行はこの施設の役割や建設の目的が述べられている。
割と漠然とした表現のため掴みどころがないが、いわゆる建築主の基本要望だ。これを無視
した計画案を提示しても跳ねられるだけだ。
注2.敷地及び周辺条件を文章で表示している。下の敷地及び周辺環境図と照らし合わせて読むこ
とが重要。
やはり、図示されたものは分かりやすく、頭に入る。
注3.要求建物の概要の記述。この条件を違反したら失格は言うまでもないこと。
面積は○○〜○○uと巾が有るため、中間値を目標とすると良い。
注4.所用室の面積で適宜とある場合がある。計画者に大きさを任せるわけだが、常識の範囲を外
れると減点となるので要注意。
エントランスホールなど重要な部分に対しても適宜が多い。これは、エントランスホールは、
それぞれの計画によって異なるので適宜としているが、役割上決して小さい面積ではないこ
とは認識してほしい。
もちろん課題によって違ってくるが、100〜200u 場合によってはそれ以上にもなる
大きさである。
注5.表にない所要室でも課題の建物には必ず必要な室や有った方が良いと思われる室は、各自で
設定して設ける事になっている。wcなど表には無いが、建物には必ず必要な物だ。
注6.その他のと言うと軽く考えがちだが、建物の形状など計画の方針を決定する非常に重要なも
ので有ることを認識する。→ 建物を計画する前に、その他の施設の配置を決める事が重要。
注7.計画に当たっての留意点は、出題者の要望が記されている。要望を無視しての計画では評価
は得られない。心して頭に留めたい。特に設備に関しては、計画の方針を左右されるので要
注意だ。
注8.要求図面等はエスキスが終わって、作図をするときに読めばいいと思っている貴方!
それは大きな間違いだよ!
作図のボリュームを事前に予測してないと時間配分が違ってくるだろう。
先に、標準的な時間割を書いたが、あくまでも標準だ。課題によって作図のボリュームは違
ってくる。多そうと思えば、エスキスの時間をいつもより早めに切り上げる必要がある。
それに、要求図面等の部分にもエスキスに影響をしそうな事項が書かれてる場合も多いので、
課題文は最後まで読みとる事。
注9.求積の仕方は千差万別。中には採点者の気分を悪くするような書き方をするものがいる。
採点者に解って貰うことが重要。
細分化しすぎると、数式がどの部分を示しているか解らなくなってしまう。そういう者に限
って、肝心の寸法が抜けている。求積の式を見ただけでも落としたくなる。
そうならないためには、数式を少なくすること。できるだけ大きな固まりで求積する事。
まともな計画をすれば建物の凹凸も少なく、自然と数式も少なくなるけどね。
それと、計算式の順番を「ヨコ×タテ=A」と一定にしておくこと。
┌──┐ ┌──────┐
│ └─┘ │ 左の図は建物の形としては良くないが、ピロテ
│ └──┐ ィーなどが有る場合は、凹凸が多い求積になる。
│ 計画建物 │
└───┐ │
│ ┌─┘
└────────┘
┌──┐ ┌──────┐ ┏━━┯━┯━━━━━━┯━━┓
│ ├─┤ │ ┃ └─┘ │ ┃
│ │ │ ├──┐ ┃ └──┨
│ │ │ │ │ ⇒ ┃ ┃
└──┴┬┤ │ │ ┠───┐ ┃
││ ├┬─┘ ┃ │ ┌─┨
└┴──────┴┘ ┗━━━┷━━━━━━━━┷━┛
<差分化された求積図> × <大きな固まりから引く求積図> ○
注10.計画の要点は、10項目も有る。(昨年は)
計画に対する意志表示の重要性を増したことと、言葉と図面の一致を重要視したことだ。
計画するに当たって、設計者としての考えを持つことが必要になってくる。これは、かなり
実務的な傾向といえよう。
只、一般的に、計画は得意でも文章にするのは苦手と言う人が多い。まして、唯でさえ短い
試験時間に、課題文を見てから苦手な文章を考え始めるなんて事では合格は望めない。事前
に準備しておくのが賢明な方法だろう。
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◆課題文を良く理解しようと丁寧に読み過ぎ、予定時間オーバーで後の作業に影響した人。
良い計画案を回答しようと時間をかけ過ぎ、作図が完了しなかった人。
作図時間に気を取られ、いい加減なエスキスで作図に取りかかり、作図中に色々と手直しをする羽目
になった人。すべて不合格です。
「E&A」は、一級建築士を目指す皆さんを応援します。少しずつ更新しますからお楽しみに。
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