~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H23.08.30記》
■ 平成23年度設計製図試験対策−4の2
当対策は設計製図対策ですので、設備全般に関して事細かく記述する事はしません。課題が与えられ
た設計製図の試験ですから、「介護老人保健施設」の必要又は標準的なところをまとめて記述します。
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◆介護老人保健施設(老健施設)の設備−2
前回は節電の観点からの空調設備を取り上げました。予想される基準階の療養室部分は、ガスヒート
ポンプ(GHP)方式で、1階2階の部分は通所リハビリ施設を含めたデイケア、食堂、入浴施設、管
理部門、その他が考えられ、ガスコージェネレーションを利用した空調(大型室内機+ファンコイル、
又は大型室内機ダクト方式)を紹介した。
老健施設は病院では無いが、介護を必要とする高齢者の施設だ。当然、体力的には若者の健常者と違
って弱い立場の人達が利用する施設だ。施設内感染に関しては充分に配慮しなければならない。
今回は、老健施設で特に気を付けなければならない衛生の面から検討したいと思う。
1.換気
換気は室内の汚れた空気と外部の新鮮な空気を入れ換えることだが、老健施設にでは換気回数を
増やせば済む話ではない。まず、室内と外部の温度差が生じることだ。折角暖冷房したのに、換気
をすれば急速に温度に変化が生じ、快適な温度湿度が損なわれる。換気については、全熱交換器の
設置は欠かせない。上記のGHPで有れば個別に設ける必要が有り、コージェネを利用した大型室
内機で有れば、室内機に組み込む必要がある。
外部の空気は新鮮空気との前提は必ずしも当たっていない。汚染された空気と考えた方が良い。
汚染浮遊物を除去し、空気を洗浄にする必要がある。さらに重要なことは湿度だ。乾燥しすぎたり、
ジメジメした環境では健常者でも参ってしまう。ましてご老人の施設には、加湿・除湿機能を備え
た空気清浄機の設置は必須となる。この装置も換気と同様に、GHPでは個別に設置し大型室内機
で有れば機械に組み込む方式がベターとなる。
老健施設では、臭気対策は不可欠な対策だ。後述するが、入所者が生活する療養室は臭気が漂う
のが現実だ。換気はそれらの臭気の元となる物質を外に放出させる意味も持っており、通常の建物
より大変重要な意味を持っている。
2.入浴
入浴はご老人に関わらず、誰にとっても楽しみな施設だ。ところが入浴施設での感染は少なくな
い。折角楽しみにしていた入浴が、健康に害を及ぼす施設となってしまったら不幸なことだ。
浴室での感染にはレジオネラ菌が有る。長い間停滞させた温水に発生しやすい菌で、抵抗力のない
老人などは死に至る怖いものだ。毎日湯を落とし槽内を清掃すれば問題ないが、手間やコストの面
から循環式の浴槽にした場合は要注意だ。週に一度循環装置や貯湯タンクのお湯を落とすなど運営
上気を付けるほか、60度以上に加熱するボイラーを循環装置に組み込む必要がある。
試験対策としては、循環式にしないことだ。さらに老健施設の入浴は我々が銭湯に行くのとちと
違う。車いすを利用しなければならない人は、特別浴槽となる。ベット状の浴槽で、四方から介護
できるようになっている。また、歩行ができる人は一般浴槽だが、所詮介護を欲する人が入る浴槽
だ。手摺り伝いにそのまま身を沈める浴槽としたい。奥行きのある大型の浴槽は不向きと言うこと
だ。最新の施設では多人数が入る浴槽よりも、個々若しくは数人で入る浴槽を進めている。
┌──┬──────────────┬───
│ │ 一般浴槽 │
│ │ │
│ │ ┃ ┃ ┃ ┃ │
│ └──╂──╂──╂──╂──┘
│ └手摺りでセパレート
│
※参考施設 http://www.kaigo-web.info/kouza/hiroshima/no2/index.html
3.排泄
健常者にとっての排泄は、便秘や痔の人以外は何の悩みも無いだろう。老健施設の人は、介護を
必要としている人々だから、それなりの配慮が必要だ。まず、移動が簡単でない。自立歩行ができ
ない人は、車いすに頼ることになる。それも介護人付だ。まず通常の車いす用より広いスペースが
必要となってくる。広く取れないときは、トイレブースの出入口を広くアコーディオンカーテンと
するなどの配慮がいる。
入所者は簡単にトイレまで行けないと言うことを認識すること。通常に施設では建物の隅の隠れ
たところが共同トイレの所定の位置だが、老健施設では移動距離が短くなるよう配慮して欲しい。
また、入所者が夜間など共同トイレまで移動することは大変危険だし、間に合わないことだって有
る。そのために療養室にはポータブルトイレが持ち込まれることがある。ベットの脇に、手軽に使
えるように置かれることがある。便器を感じさせない家具調の物も有るが、大抵がリースだ。見た
目はチェアーのような家具調でも、臭いはなかなか消せない。老健施設で換気が特に重要なことは
お解りかな。
※参考写真 http://www.aronkasei.co.jp/anjyu/hi_product.php?cat2_id=2.html
4.汚物処理
老健施設には汚物処理施設が義務づけされている。考えられる汚物とはどんな物だろうか考えて
みよう。上記3.で述べたポータブルトイレの汚物は?トイレの汚物は処理室の汚物流しに流すと
して、汚したポータブルトイレは洗い流さなければならない。紙オムツはどうだろう。入所者の中
には紙オムツを必要とする方も多く居られる。使用した紙オムツは一般ゴミと一緒に捨てられない。
別に処理業者に委託することになる。回収までの保管も考えなくてはならない。
また、夜具やシーツ類も汚してしまう。これらも一般の物と一緒に洗濯できないので、区別して
出さなければならない。その他の汚物には、排便介助に使用したゴム手袋や、お漏らし、嘔吐等の
後処理に使用した、モップ等などの清掃道具も処理しなければならない。これらの汚物は単なる汚
物と言うだけでなく、場合によっては感染菌に汚染されているかも知れない。他の室と案院接触は
避けたい。床、壁の消毒・清掃も必要になってくるので、共同便所、浴室、洗濯室の近くに配置さ
れることが多い。
汚物処理室は裏方施設なため、なかなか参考になる写真が少ない。数種類用意したので、これらか
らイメージして欲しい。
※参考写真 http://osakajo.supercourt.jp/2010/02/beforeafter.html
http://www.oph.gr.jp/blog/pdf/appliance_002.pdf
http://www.tohoku-icnet.ac/news/files/en_05.pdf P220,P21、P46〜P49
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◆介護を必要としている老人の施設(老健施設)とは、これが現実なのだ。ご理解戴けただろうか。
施設の内容が分かれば、どのようなことに配慮が必要かが分かってくる。まず、設計するには、対象
となる施設がどのような内容かを把握する事から始まる。焦ることは無い。内容が分かれば、老健施
設の所要室がどのような位置関係が良いか描けてくる。あれも、これもと的を外した課題を数多くこ
なすよりも、標準的なプランと機能図を頭に叩き込んだ方が計画しやすいはずだ。
指導校などは、課題外しをしたくないために考えられるだけの色んなパターンを与え、受講者を混乱
させる傾向にある。要注意だ。ただ、現在の受験者は手書きの作図はほとんど経験していない。その
ためには数多くの作図をして慣れておく必要は有るだろう。
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