~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H23.08.25記》
■ 平成23年度設計製図試験対策−4
今皆さんは、暑い中試験に向けて頑張っていることと思います。特に今年は厚い!近年の地球温暖化
に加え、電力不足による節電が皆さんを暑い環境にしているのではありませんか?
前回所要室を検討しました。所要室の検討に設備室が有ります。当然設備の方式によって大きく違って
きますから、今回は介護老人保健施設に適した設備方式を検討しましょう。
従来の設備方式を調べるのも検討の一つですが、冒頭に述べたように、これからは節電の時代です。
「節電」を一つのテーマに検討することも重要ですね。社会と共に進む我々建築士は、社会に敏感に対
応することも重要です。試験に直結するかどうかは分かりませんが、例年の傾向から設備方式は受験者
自身で決めることになると思います。そうなると、意図を持って計画を立てた方が計画の要点は遥かに
書きやすくなりますよ。
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◆介護老人保健施設(老健施設)の設備−1
老健施設はこれまでの試験課題であった事務所ビルや美術館と違い、入浴施設や洗濯施設を有してい
るのが特徴だ。このことは設備方式に大きく影響する。大量にお湯を沸かす必要が有るために給湯器が
必要になってくる。ただ、お湯を沸かすからボイラーを設置すれば良いなんて短絡的に考えずに、節電
を意図した効率的な方式が有れば良いのだが。
1.空調方式
a.ガスエンジンヒートポンプ(GHP)・・・ガス燃料エンジンを利用したヒートポンプ空調
電気ヒートポンプ(EHP)は一般的な個別空調としておなじみだが、EHPとGHPとの違
いは、EHPは電気モーターでコンプレッサー(圧縮機)を駆動させるのに対して、GHPは
ガスを燃料としたガスエンジンでコンプレッサーを駆動させるだけの違いだ。
GHPのメリットとして電気に比べて燃料費が安い。いわゆるランニングコストが安上がりと
言う点だ。設置費はトントンと見られている。
GHPは室内機+冷媒管+屋外機(ガスエンジン含む)で成り立つ。機器容量が大きければ、
屋外機1に対して複数の室内機に対応したマルチタイプが有る。これも、EHPのマルチタイ
プと全く同じ。
療養室などが予想される3〜5階の空調は、屋上に屋外機を並べ、療養室の天井にカセット式
室内機を配置するマルチ方式が良いだろう。
屋外機は2.2m(高)×2.0m(幅)×1.0m(奥行)を3台程度。
室内機は1.1m(幅)×0.7m(奥行)を4人部屋は天カセ2台が目安。個室は1台。
【冷房時のヒートポンプのしくみ】
┌→→→→D→→→→┐ ┌→→→→@→→→→┐
┌────↑────┐ ┌──↓─↑──┐ ┌────↓────┐
│ ┌─↑─┐ │ │コンプレッサー│ │ ┌─↓─┐ │
│ │気 体│ │ └───┬───┘ │ │気 体│A │
│冷←│ C│←熱│ ┌──┴───┐ │フ→│ │→熱│
│気←└─↑─┘←気│ │ガスエンジン│ │ァ→└─↓─┘→気│
│吹←┌─↑─┐←吸│ └─↑──↓─┘ │ン→┌─↓─┐→放│
│出←│液 体│←収│ LPガス 発電機 │ │液 体│→出│
│ └─↑─┘ │ │ └─↓─┘ │
└────↑────┘ ┌───┐ └────↓────┘
└←←←←←B←←←膨張弁←←←←←←←←←┘
└───┘
@コンプレッサーで圧縮された高温・高圧の冷媒ガスは屋外機に送られる。
A高温高圧の冷媒ガスは、屋外機で外気と熱交換され液化し、高温高圧の冷媒液となる。
液化するときに熱が発散し、この熱をファンで外部に放出する。
B高温高圧の冷媒液は、膨張弁で減圧され低温低圧の冷媒液に変わる。
C低温低圧の冷媒液は、室内機で熱交換され低温低圧の気体に変わる。熱交換で冷やされた冷
気はファンで室内に吹き出される。
D室内の暖気を収集した低温低圧の気体はコンプレッサーに送り込まれる。
※@〜Dのサイクルがヒートポンプの原理で、コンプレッサーを駆動させる手段がガスエンジンで
有ればGHPで、電気モーターであればEHPだ。
※GHPのガスエンジンの駆動力をコンプレッサーだけでなく、発電機にも利用した機種も有る。
発電機つきだと発電した電気で屋外機のファンも自前で回せる。(次に述べるコージェネの小型
版とも言えるが、試験には少し余談だったかな。)
※室内機を天カセにした場合は、湿度調整、空気清浄、換気装置は別途必要となる。
b.ガスエンジン・コージェネレーション・・・ガスエンジンで発電すると共に、廃熱を給湯や
空調に利用する総合エネルギーシステム。
LPガスを燃料にガスエンジンを使用するのは、上記のGHPと同じだが、この場合はガスエン
ジンを使って電気を作り、出される廃熱を利用して給湯や空調をするシステム。
ガスエンジンは自動車のエンジンに似ており、燃焼室に送り込まれたガスが着火し爆発する。爆
発のエネルギーを回転力に換え、発電機を動かし電気を造る仕組みだ。
老健施設では大量のお湯も電気も必要とする。電気もお湯も造る設備として老健施設に向いた設
備といえよう。さらに廃熱を他の機器と組み合わせることで空調にも利用できる。他の機器との
組合せは、幾通りもあり全部は記述できない。概念として、発電、給湯、空調ができると思って
貰えれば良い。
┌──────┐ ┌────┐
LPガス→→ガスエンジン →→→発電機 →→電気
└──↓───┘ └────┘
↓
↓ ┌───────┐
廃熱 ├→→→吸収式冷温水機→→→冷房
↓ └───↓───┘
↓ ↓
廃熱 ├→→→→→→┴→→→→→→暖房
↓
┌─↓──┐ ┌────┐
水→→熱交換機→温水→→ヒーター→→給湯
└────┘ └────┘
※ガスエンジン・コージェネレーションは1台で発電、給湯、空調が可能だが、給湯の対応は集中と
分散をベストミックスするのが重要だ。
例えば、大型の給湯器で微量のお湯を長い配管で24時間供給し続けるのは如何にも非効率だ。従っ
て給湯のメインである浴室の給湯をコージェネでまかない、他の小口の給湯はガス給湯器にするな
どの計画が良いのだろう。
実際にコージェネで全館の電力を確保しようとすれば相当大型の機種になるだろうし、給湯、空調
への廃熱の利用がバランス良く働くとは限らない。コージェネは主体を何に設定するかで大きく変
わる。給湯を主体に考え、生み出される電力に不足が有れば通常の電力でまかなうなど、考え方は
千差万別だ。
試験では概念で進めざるを得ないので、コージェネを利用するとなると、浴室に近接した当たりに
機械室を設けることにすれば良いのでは。
機械室の大きさは、温水部門のコージェネと温水ヒーターセットで3.0(幅)×2.0(奥行)程度な
ので、スペースとしては5.0×4.0=20u〜25u程度と考えれば良いのではないだろうか。
※コージェネ採用の場合の設備室全体の面積は、コージェネの組み合わせで大きく異なるが、コージ
ェネを使わないときの面積より小さくなるのは確実で、従来の×0.7と考えても良いのではないか。
いずれにしても機械室の面積で神経質になることは無い。
※従来必要となる電気室もコージェネを採用すると、不要若しくは屋上キューピクルで済んでしまう。
c.空調室内機
@)天井カセットタイプ・・・個別制御向き冷暖房器。別途換気必要。
.ヒートポンプ
外部に設置された屋外機(圧縮機と熱交換機)で造られた冷温冷媒が、冷媒管で結ばれた
天井に組込れた室内機(熱交換器と吹出ファン)により冷風や温風で空調を行う。
・ファンコイルユニット
冷温水発生機などの機器により造り出された冷温水を、配管を通してコイル(熱交換器)
に送り、 送風機によって室内に冷・温風を送り出す空調装置。
一体のケーシングの中にコイル・送風機・ 空気濾過器などを組み込んだもので、天井吊
型の他壁埋込型・床置型などのタイプがある。個別空調向き。
A)ダクト接続タイプ・・・個別制御不向き。大部屋向き。
.ヒートポンプ
屋外機と冷媒管と室内機の関係は天カセと同じだが、室内機が集約され大型となったもの。
空調範囲を階又はゾーンに分け、ゾーン毎に1台の大型室内機(熱交換器+ファン)を設
置する。室内機からダクトを通して温風・冷風が各ゾーンへ送られ冷暖房を行う。
大型室内機に湿潤器や空気洗浄器など付加機能を組込み、質の高い空調にする事もできる。
室内機がまとまっているので、個別の制御がし難い。高い天井高や使用時間帯が同じ場合
など共用部に適している。
・ファンコイルユニット
ヒートポンプと仕組みは同じ。ヒートポンプの冷媒が冷媒ガスに対して、ファンコイルは
冷温水の違い。
※コージェネレーションの空調は、廃熱を利用した吸収式冷温水発生器を介して行うので、冷
水・温水にて空調を行うタイプ。
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◆空調は熱源に何を用いるか、吹出方式をどうするか、何処に設置するか、集中か分散かで分類が多岐
に渡ります。従って、機械室の大きさも方式によって違ってくるので計画はやっかいだ。
試験では、老健施設に向いた方式を最初から設定して臨んだ方が良いだろう。
資格学校などでは指導抜けを恐れる余り、あれもこれも詰め込み頭でっかちになりがちなので注意が
必要だ。「E&A」でもついあれもこれもと記述してしまう。ファンコイルなんて記述する必要もな
かったかも?設備は次回も続きます。
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