~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H23.08.17記》
■ 平成23年度設計製図試験対策−3
今年の設計製図の課題が何となく掴めましたか。お盆休みを利用して、実際の施設を見学した方も多
いことと思います。実物の方が資料よりより確実に全体像が掴めますよ。ただ、注意をしたいことは、
実例は課題と同じケースで無いことが大半です。実際の施設は色んな物が混在した複雑な形態となって
いるので注意が必要です。
対策ー3では施設の必要所要室について検討しましょう。
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◆介護老人保健施設(通所リハビリテーションのある地上5階建ての施設である。)
課題からも分かる通りに課題の建物は、介護老人保健施設と言う入所施設と、通所リハビリ施設の複合
施設だ。入所施設と通所リハビリ施設の役割を頭に入れ、それらを管理する管理部門の在り方とが、こ
の建物を計画する上で重要なことだろう。
介護老人保健施設・・・介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師
による医学的管理の下、看護・介護といったケアはもとより、作業療法士や理
学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日
常サービスまで併せて提供する施設。
通所リハビリテーション ・・・通所リハビリとは、別名デイケアともよばれる。
デイケアは、介護老人保健施設・病院・診療所などの医療施設に通い、通所リ
ハビリ計画に従って理学療法や作業療法などのリハビリを受ける介護サービス。
そのため通所リハビリ(デイケア)は、通所介護(デイサービス)とは異なり、
リハビリがサービスの中心になる。
T.入所施設(介護老人保健施設)の所要室
☆印の付いた所要室は、介護老人保健施設の基準に定められた所要室を示す。
a.宿泊部門(老人保健施設の目的は、在宅復帰をめざす訓練施設なので期限をきられます。)
☆療 養 室 ・・・療養室(地階は不可)は、定員4人以下で、入所者1人当りの床面積が
8u以上あること。実例は4床室が多い。
寝台を設け、身の回りの品を保管する設備を完備。ナースコールを設置。
療養室(個室)・・・当然、利用費は多床よりも高くなる。洗面、トイレ完備。
☆便 所 ・・・療養室の有る階毎に設置されていること。
☆洗 面 室 ・・・療養室の有る階毎に設置されていること。
☆サービスステーション・介護職員の詰所。療養室からのナースコールにも対応。各療養室の
中央に配置が望ましい。
※短期入所施設(ショートステイ)は介護老人保健施設とは別事業だが、介護老人保健施設を利用
しても良いことになっている。療養室の空き個室をショートステイに利用しているケースが多い。
ショートステイ専用に設けたとしても、建築計画的にはロングステイもショートステイも相違は
ない。(H23.9.10文言一部修正)
b.リハビリ部門(機能訓練を通して在宅生活が行えるようにする。)
☆診 察 室 ・・・入所者の健康状態、リハビリの進展状態を把握し指導する。
☆機能訓練室 ・・・「1u×入所定員数」以上の面積であること。最低40u以上を有し、
訓練に必要な器械・器具を備える。(作図で要求される可能性は大)
理学療法士、作業療法士が担当。必要に応じて個別訓練。
機能訓練には、理学療法、作業療法、言語療法訓練等がある。
c.共用部門(入所期間の生活をサポートする。)
☆食 堂 ・・・「2u×入所定員数」以上の面積であること。
規模の大きい施設では、療養部門の各階に設置されることが多い。
☆調 理 室 ・・・食器、調理器具等を消毒及び清潔に保管する設備、防虫及び防鼠設備を
設ける。
☆談 話 室 ・・・入所者同士や入所者とその家族が談話を楽しめる広さを有する。
☆レクレーション 室 ・・・レクレーションを行うための十分な広さを有し、必要な設備を備える。
食堂と一体となった例が多い。
☆浴 室 ・・・身体の不自由な人に適した浴室。
一般浴槽の他に介助を必要とする人に適した特別浴槽を設ける。
特 別 浴 室 ・・・設置基準にはないが、特別浴槽を浴室として一般浴室と切り離して設け
るケースが多い。介助機器完備。
☆洗 濯 室 ・・・入居者の洗濯をする室。感染症の心配があるために、入所者の洗濯物を
一堂に集めて洗濯することはない。個別洗濯で熱水洗濯機能がある洗濯
機や次亜塩素酸ナトリウム液を加えて洗濯する方法が求められる。
実体はややこしそうだが、計画としてはコインランドリー的な室を想定
すれば良いのではないか。
☆汚物処理室 ・・・他の施設から区別された一定のスペースを有する。これも感染症の心配
から恐れのある物は廃棄しなくてはならない。
理 容 室 ・・・介護を必要とする人が長期に渡り療養するために、生活補助施設として
設けられることが多い。
廊 下 ・・・巾1.8m以上。中廊下は巾2.7m以上。(いずれも手摺り内寸法)
階 段 ・・・両側に手摺りを設ける。
療養室が3階以上にある場合は、避難階段を2以上設置。
E V ・・・療養室が2階以上にある場合は1以上設置。
d.管理部門(必ずしも全てが必要でないが、実例としてあるものを列挙した。)
事務室、倉庫、リネン室、会議室、スタッフ控室・更衣室・食堂、ボランティア室
U.通所施設(通所リハビリテーション)の所要室
送 迎 ・・・介護が必要な人が対象なので、通所施設までの送り迎えが必要。
車いすやストレッチャーごと乗り込めるリフト付きワゴン車が多い。
車 寄 せ ・・・雨天の日などのためにキャノピー付の車寄せ。
受 付 ・・・まずは手続きと案内を兼ねた受付から始まる。
談 話 室 ・・・通所者同士や通所者とその家族が談話を楽しめる広さを有する。
☆デイケア室 ・・・病院、診療所、又は老人保健施設に通い、理学療法、作業療法、その他
必要なリハビリテーションを行う。必要面積は「3u×利用定員」以上。
(介護老人保健施設の機能訓練室とデイケア室とを兼用しても良いが、区
分は必要。
課題では、兼用させるか別途設けるかは不明だが、一般的には機能訓練
室と兼用している事が多い。これはスタッフの人数の関係からか?)
食 堂 ・・・デイケアは契約によって異なるが、3〜8時間の滞在となるため設置さ
れる。デイサービスと違って食事がサービスの主体では無いため簡素な
物が多い。
食堂面積を上記のデイケア面積に含める事ができるため、食堂をデイケ
ア室と兼用したものが多い。
リハビリでも、器械や器具を使用しない作業療法などのリハビリには向
いているため、食堂をデイケア室に含めても良いとしたのであろう。
リハビリ相談室 ・通所リハビリは在宅が基本のため、家族が専門家に相談することが多い。
診 察 室 ・・・リハビリの経過や状況等を診察し指導します。
入 浴 室 ・・・デイサービスに近いサービスだが、デイケアとデイサービスを使い分け
るのは不便なので、デイケアにも設置されている。設置されていると言
っても、老健施設の入浴施設を兼ねている。
※基本的には通所リハビリテーション(デイケア)は、リハビリを主目的で通所するのだが、
元々介護を必要とする人達なので、在宅でなかなかできない入浴や食事等受けることができ
る。制度的には、デイケアではリハビリだけ受け、介護サービスはデイサービスで受けても
良い。いずれも有料サービスとなる。
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まとめ
┏━━━介護老人保健施設━━━━┓
┃ ┃
┌──────┐ ┃ ┌───────────┐ ┃
│在宅要介護者│ ┃ │ 療養室部門 │ ┃
└──┬───┘ ┃ └─┬───────┬─┘ ┃
│ ┃┏━━┿━━━━━━━┿━━┓┃
│ ┃┃┌─┴──┐ ┌──┴─┐┃┃
│ ┃┃│リハビリ│ │入所生活│┃┃
│ ┃┃│ 部門│┌┤ 部門│┃┃
│ ┃┃└─┬──┘│└────┘┃┃
│ ┗╋━━┿━━━┿━━━━━━╋┛
│ ┃ ├───┘┏━━━━━┛
│ 送迎 ┃┌─┴──┐ ┃
└──────────→┃│デイケア│ ┃
┃└────┘ ┃
┗━通所施設━━┛
※課題は、通所リハビリテーションがある地上5階建ての介護老人保健施設なので、上記のよう
な関係を想定される。全てのリハビリを兼用するのか一部を兼用するのかは課題次第。
どのようなケースでも入所してリハビリを受ける部門と通所してリハビリを受ける部門の動線
整理は必要。リハビリ部門と生活部門が兼用されたとしても、療養部門へデイケア部門が入り
込むことはない。課題によっては生活部門である食堂が療養部門の各階に配置されることも有
り得る。その時は、デイケアの食堂と兼用することは有り得ない。その時はデイケア用に別途
食堂を設けなければならない。
課題では基準階が想定されている。このことは基準階は療養部門って事になりそうだ。
1階、2階の計画が重要になってくる。
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◆課題発表があって数週間が過ぎました。この間、既存の施設を見学したり介護老人保健施設の資料を
取り寄せたりして概念は掴めたと思います。
まず、介護老人保健施設はどのような物かを掴むことですが、掴めたでしょうか。次回からは設備に
ついて検討しましょう。
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