∞∞∞∞■一級建築士設計製図試験チャレンジ奮闘記:エスキス編』∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞《H23.10.13記》


 恒例の「E&A」スタッフが設計製図試験にチャレンジの実況が始まります。今年は課題文の入手に
手間取り、回答例を即日に掲載出来ませんでしたが、本日チャレンジの様子を実況放送します。
   
 E&Aでは解答例とせず回答例としているのには、意味があります。
建築主(試験元)の依頼事項(課題文)に対して計画案を提示するのであって、問題を解くと言う気持
ちでは接していません。
エスキス図 設計製図試験エスキス奮闘記・・・提供された課題文
A.課題文の要点整理(まずは、冷静になって課題文を整理しよう。)

 大都市の市街地が立地で、敷地はやや狭い。北側の病院に併設される施設。

 職員の駐車場・駐輪場は北側病院の駐車場を利用するが、来館者は送迎車
 2台、車いす用1台、更に車寄せが条件。

 道路は東西に2面接道。西メイン、東サブ。南公園で良好。

 5階建てと道路斜線は一応チェック必要。18m道路で5階建ては影響なし。

B.<アプローチ・その他の施設計画>

アプローチ設定
 利用者アプローチは歩道付18m西側道路。サービス・管理者アプローチ
 は東側道路。病院からの車利用者のアプローチは、計画上は設けた方が良
 いだろうが、一体開発ではないし昨年の本試験でも別敷地の駐車場からの
 アプローチは考慮されていなかった。

その他の施設
 来館者利用の送迎車や車いす使用者用駐車場、車寄せはメインアプローチ
 側。サービス駐車場は東側。

※ここまでのイメージ造りは順調だ。アプローチから必然的に決まる要素か
 らゾーニングも見えてきた。後はボリューム的に旨く納まるかだ。
C.敷地の状況把握

 まず、敷地の規模を把握するために、敷地にメッシュスケールを当てる。
 メシュ・スケールとは、縦横の2次元を測るスケールのこと。一見グリッ
 ド・プランに見えるが、あくまでも、敷地の状態を測るスケールだ。
 7m×7mのメシュ・スケールを当てることで、敷地端部の空き寸法が把
 握出来る。この空き寸法とその他の施設から判断してグリッドを決める。
 結果的に計画グリッドがメシュ・スケールの7m×7mと同じに成ること
 もあるが、果たしてどうだろう。

 まず、機械的に手を動かして線を引くことで、気持ちが落ち着いてくる。

 メイン道路側は駐車場などスペースとして調整しなければならない要素
 が多いから、サブ道路側の敷地からサービス用駐車スペース3mを確保し
 てメッシュを引こう。南北は大都市の市街地なので、北から2mから離し
 て始めよう。

 南北は7mグリッドが5つ。公園側境界との寸法は、僅か1mとなる。
 4グリッドでは余りが多き過ぎるし、6mスパンとしても6mの空きとな
 る。ここが思案のしどころだ。
 この施設は北側の病院に併設されるものだから、北側隙間は基礎が越境し
 ない程度でも許されるだろう。北に1m移動して南公園側は2mとすれば、
 窮屈だが大都市では違和感はない。

 東西は7mグリッドが4つ。メイン道路側の空き5mは、送迎車や車い
 す用駐車には狭い。かと言って3グリッドに減らしたら計画が出来ないし、
 一部をピロティにしないと納まらないか?
 6mスパンにすると空きが9mとなって2台横並びが可能となる。延面積
 が小さくなりすぎにも思えるが、面積次第だ。

※西側9mの開きが少し広すぎる感じがする。展開によっては、東西方向は
 一応6mスパンも考えられる。
【ボリューム検討】
   7×7グリッドの場合        7×6グリッドの場合
1階  5*4=20G           5*4=20G
2階   〃 =20G            〃 =20G
   ─────────         ─────────
合計      40G               40G
1階ピロティ3G引くと37G        (42*40=1,680u)
   (49*37=1,813u)
   
中間目標値
   3,700-1,813=1,887u         3,700-1,680=2,020u

基準階面積
     1,887÷ 3= 629u           2,020÷ 3= 673u
           ↓                  ↓
      629÷49= 12G              490÷42=16G

上限G数      14G                  18G




D.ボリューム検討

 メシュ・スケールから、東西方向のスパンは7mと6mが考えられる。

 敷地からその他の施設部分を除いた部分が、1階の建設可能グリッド。

 全体面積を中間値 3,150uを目標にチェックする。
 7mスパン:1階、2階は20Gだが、ピロティ3G引くと計37G。
 基準階は12Gとなる。
 6mスパン:1階、2階は20Gで計40G。基準階は16Gとなる。

これまでの検討では埒が開かないので、具体的に基準階は何グリッド要る
  か検討してみる。


E.基準階を検討

 基準階のある課題は、基準階から攻めるのが鉄則。

 基準階だけ2案を内部を検討し、比較する。

 課題は、「自然光を取り入れて明るく開放的な空間となるように計画」
 となっている。居室の採光は当然だが、わざわざ冒頭に記述されている事
 に配慮したい。それには、参考図面で見た吹き抜け案が良さそうだ。

 吹き抜けとなると取って付けたような吹き抜けでは様にならないなぁ。
 せめて3〜4グリッドは欲しいところだ。
 (試験から外れて、設計者の性が出始めている。ご用心ご用心!)

 眺望の良さそうな公園側に食堂は位置から進めていくと、療養室は数も
 多いので、東面と西面と2面に面して配置してみる。40uが6室と20uが
 4室だから、7×6グリッドが妥当か?7×7の場合は、1mバルコニー
 という手は有るけども?

 中央吹き抜け案となると、総20Gの寸胴な形状になるなぁ。まずは、
 基準階を固めよう!

 まず、療養室を東西に並べてみよう。西にAを縦5グリッド並べ、東に
 あの残り1グリッドとBが2グリッドと並べる。廊下は片側廊下であれば、
 壁芯で2mok。中央に吹抜けを取ると、残りにその他の室が旨く納まれ
 ば良いのだが。

 (試験でなく業務で計画を立てる場合、有る程度のホルムや設計者の願望
  を前面に立てて進むことが多いが、短時間でまとめなければならない試
  験では危険な事が多い。型にはまれば、スムーズに行くこともある。)

 最終的に7×6と7×7のグリッドを併用して、吹抜けを含めて20Gを
 基準階に当てることにし、細部まで詰めずに1階、2階の検討に移る。
F.所要室の面積整理・位置確認

 本試験の課題では、レクレーションルームや機能訓練室、浴室Bなど
 入所者と通所者とを区分けしていないのが特徴だ。

 東西スパンを6mと7mの混合スパンにすると、一部はピロティにな
 らざるを得ない。駐車場関係をまとめる。車寄せはロータリー式がベスト
 だろうが、大都市では敷地に余裕がないと見て、寄りつきスペースを確保
 するものとした。
 (これで減点なら減点でイイ!ここで悩んでも仕方がない。次に行こう。)

 1階に必要な要求室を実際に17Gに羽目込んでみる。
 厨房は2階でも良いが、レクレーションルームとの関係も有るし、出来た
 ら1階で納めたい。

 1階又は2階と指示された室のほとんどは2階になってしまった。
 入所者と通所者の区別がないから、どれを2階に計画しても可笑しくはな
 い。面積だけの問題だな。

1階
・エントランス :約100u
・レクレーションルーム  :約 50u
・施設長/応接室:約 25u〜30u
・事 務 室  :約 65u〜95u(8〜12u/人)
・厨   房  :約 60u〜80u(食堂の25〜35%)
・設 備 室  :約 40u〜50u(コージェネ。ボイラー・タンク・受水槽
                ・ポンプ類設置 電気・空調関係は屋上)
・汚物処理室  :約 10u〜20u(適当、計画の都合に従う)
・選 択 室  :約 10u〜20u(適当、計画の都合に従う)


2階
・機能訓練室  :約100u
・食堂・デイルーム :約 50u
・浴 室 B  :約100u
・診 察 室  :約 25u
・会 議 室  :約 30u〜40u(1.5〜2.0u/人)
・相 談 室  :約 10u〜20u(適当、机やテーブルが並んだ室を想像)
・ボランティア控室 :約 20u〜30u(人数にも依る。指定無し10名位か適当)
・職 員 控 室 :約 10u〜15u(適当)
・倉庫・リネン室 :?      (余ったスペースに適当。リネンは位置を検討)
・便   所  :?      (1,2階は個所が多い方が良い。ヘルパー
                も居るので、多目的オンリーは不便。)


その他の必要室

  余裕が有れば色々考えられるが、面積次第。中間値を目標に設定すると
 その他の室が設けにくくなる。上限に近い設定の方が、融通が利き、その
 他の室の設置もしやすくなる。

   ・機能訓練室の理学療法士の控室など。
   ・ポストルーム。
   ・守衛室。
 ※今年の課題は、ほぼ必要な室は網羅されているので、上記の室などは
  スペースが余り気味で有れば設ければいい。有っても無くても点数に
  は響かないだろう。(課題文による。)



 所要室に面積が与えられていたら、当然守ること。記述が無ければ適当に
 処理する。適当とは、平均値と言う意味と方式の違いで差があり、判定の
 しようが無いものとが有る。その時は都合の良いように収めれば良い。





G.機能図

 エスキスを進めるために、まず機能図を書けと指導するところもある。
 勿論必要なことではあるが、課題に応じた機能図でないと意味がない。
 それには、面積の把握と課題が要求する位置関係を整理する事から始まる。


 機能図を書くに当たりグリッドは表示していた方が後の展開は速い。まず、
 位置が明解な室や大きな室、重要な室から優先して位置取りをする。

 機能図は全室を書き込むのでなく、位置取りや関連がハッキリしているも
 のだけでも良い。ここで時間を割かない。

 部門は1つのエリアとして意識しながら進める。今年の課題では部門が不
 明瞭。(機能図が書きにくい課題もあるので、悩まずに先に進む。)

 基準階はボリューム検討の段階で検討しているので、より詳細を詰め、エ
 スキスへ進んでいく。

F.各階エスキス

<1階>

 縦スパンを7mの5グリッド。横を6,7,7,6スパンの4グリッドの
 整形な建物とした。(全階はたまたま、こだわると痛い目に遭う。)

 エントランスホールの下足箱を適当に記入したら、人数分確保出来てない
 様子になった。こんな風に計画すれば良かった。 参考写真

 エントランスから南側の1等地にレクレーションルームを配置した。
 それに伴い、厨房を隣接させた。厨房の位置は上階の食堂用のパントリー
 とダムウエーターで結ばれるため、各階の調整に苦労した。当初のイメー
 ジからすると、南に移動した感が有る。

 エントランスホールに面して事務室、EVを配して分かりやすい計画とし
 た。事務所はやや細長い室だが、受付業務と一般事務とを考えれば、これ
 も有りとした。車寄せの為に1スパン奥なっているが、トップライトを設
 けることで自然採光が採れる室とした。
 EVの台数は1台か2台か迷ったが、100名未満の施設で1台の例も多
 いことから1台とした。

 設備室は、事前に検討したように給湯ボイラーとコージェネ、ポンプ類、
 受水槽で45u程度とした。他の設備は屋上配置で計画。メンテナンスを
 考慮してサービス駐車場の地殻に配置した。


<2階>

 エレベーターを出て直ぐに機能訓練室と食堂・デイルームを南の公園に向
 けて配置した。

 中庭を挟んで南と西側を利用者ゾーン、北と東側を管理サービスゾーンと
 明確に分離した。

 廊下は回遊式の片廊下形式とした。回遊式にすることで2方向避難を容易
 にした。廊下幅は壁芯で2m柱型の廊下側への出っ張りを無くした。

 便所は、小規模のものを各所に配置しようと思ったが、スペースの都合
 で出来なかった。規模も小さいことだしと言い聞かせて妥協した。ただし、
 浴室の脱衣室には多目的用便所を設けるようにした。




<基準階>

 吹抜けとEV、階段を中央に配置し、廊下を2階と同様に回遊式として2
 方向避難を確実にした。療養室前の廊下幅は壁芯で2mとし、柱型は廊下
 側に出っ張らないように偏芯が必要。各階とも作図の段階で注意が要る。

 サービスステーションを中央に配置し、サービス動線が短くなるようにし
 た。中央に配置したが、吹抜けを設けたことで自然採光も通風も可能な計
 画で、出題元の希望にかなっている。

 採光は、全ての居室に無理して取る必要はないと模試の回答で記述したが、
 本試験課題の冒頭に自然光を取り入れ明るく開放的な空間を条件としてい
 る以上、積極的に自然採光を心掛け無ければならない。

 中央に吹抜けを配したことで、避難上のメリットの他に課題冒頭の「自然
 採光取り入れ明るい開放的な空間」とする事が出来た。
                          


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◆今日はここまでとします。

 受験者の皆さん試験は如何でしたか。日頃の力が発揮できたでしょうか。例年課題にチャレンジしていますが、
 時間に追われる試験は苦手です。毎年取り組んで慣れていると云っても、やはり焦るし、日頃偉そうなことを
 言っている手前、稚拙な計画は恥ずかしいと結構プレッシャーが掛かります。

 課題はオーソドックスな感じで、取り組みやすかったのではないでしょうか。面積も概ね示されていたので、
 余計な苦労はしないで済んだのではないでしょうか。一時、にパズル的だと言って面積の記述は減りましたが、
 やはり、試験時間上、また採点上細かな面積の提示は仕方がないところかも知れませんね。

 試験方法よりも、受験指導校の指導の仕方が気になります。経験を積ませるためかも知れませんが、現実離れ
 した色んなパターンを学習する事で、却って計画を難しくしているようで仕方がありません。もっと課題の本
 質を説明し学習した方が融通も利くし、労少なくて成果を上げられると感じます。
 指導校が設計製図を難しく、難しくして、皆さんに必要以上の苦労を強いているのではないでしょうか。 
 
◆結果発表までにしばらく間があきますが、皆さんどう過ごしますか。建築の勉強はテキストや製図板に向かう
 だけではありません。生の建物を見ましょう。接しましょう。そして、建築を愛しましょう!

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