∞∞∞∞■『建築士設計製図チャレンジ奮闘記:エスキス編』∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞《H22.10.16記》


 回答例を作成するときの心構え(受験者の心構え)として、100点満点は決してねらっていません。
時間内に終わらせる事と、計画案が建築になっているかどうかと言うことだけです。

 わずか2時間程度で考える計画は、建築主からの依頼を受け最初に提示する計画案だと考えています。
今後、何度か打ち合わせを重ね最終案に持っていくための最初の叩き台ですね。

 初めてお会いする建築主の依頼を一度で充分に汲み取る事は、何時においても難しいです。
食い違いは、打ち合わせを重ね摺り合わすことができますが、最初の提示が建築的に不可能であったり、
素人目にも頼りない計画であれば、建築主から建築士として認めて貰えないですね。
    
 E&Aでは解答例とせず回答例としているのには、意味があります。
建築主(試験元)の依頼事項(課題文)に対して計画案を提示するのであって、問題を解くと言う気持
ちでは接していません。

だから、クイズ問題で有れば解答は1つでしょうが、注文なので回答は計画者の数だけあると考えます。
頼りない案だとか、まったく注文を無視しているとかでは満足して貰えないでしょうが、どれが正解と
言うことではなく、色んな計画が成立すると考えます。
エスキス図
エスキス奮闘記

 入手した課題文は、コピーしたものをFAXしたもので、受験者のメモ
書きやらアンダーラインで非常に見辛い物だった。
冒頭から、たぶん常設展示に企画展示と書いてあるのだろうなと肝心なと
ころほど判読が難しい状態で、やっかいだなぁと思いながら進めたのが、
後で思わぬ展開となってしまった。まずは体験記をご覧あれ。
A.<課題文の要点整理>(まずは、冷静になって課題文を整理しよう。)

※課題での美術館は、地元画家の絵画を展示する目的と共に、地域住民創
 作活動や子ども達の美術教育の場に重きを置いた美術館を要求している
 ようだ。
 また、周辺環境に応じて複数のアプローチも可能としている。課題は、
 アプローチを含めこれらの周辺環境を建築にどうのように活かすかを要
 求している。


B.<アプローチ・その他の施設計画>
アプローチ設定
・エントランスの特記に「アプローチは公園又は遊歩道からでもよい。」
 としているが、ここはやはり北側をメインと考え、南や西からのアプロ
 ーチはサブとして考えよう。
・搬入路は東のサブ道路側にすれば、公開と非公開ゾーンが明確に分かれ
 そうだ。

その他の施設の設定
・創作広場は公園と遊歩道からの動線に配慮する条件だから必然的に南西
 の角だ。
・駐車場は車いす用がオーソドックスに北西側で、サービス車用が東側に
 なる。
・駐輪場は規定がないぞ。珍しい。(駐輪場の文字を読めていない。)


C.<敷地状況把握>
・まず、敷地にグリッドメッシュを架けてみよう。
・手を動かして線を引くことで、落ち着いてくる。
・南西の角から2m離して7×7のメッシュを架けよう。
・横は6グリッドで東の寄りが1mだ。サービス駐車を考えると3mは欲
 しい。どこかのスパンを6mに調整するか。
・縦は4グリッドで北の寄りが5m。HPの歩道が確保できない。
 南に1mずらしたら、南が1mしか残らないしバランスが悪い。それは
 無いな。
・HPは車の脇のスペースが充分だし、我慢して貰おう。ただ、向かい合
 わせの駐車は長くなり、エントランスとのスペースが心配だ。


D.<機能図>
・今回は2階に指定があり、機能図も最初から階別で想定できそうだ。
・ゾーニング的には東が搬入・管理部門で、西側が共用部でまとまりそう。
・創作広場との関係でアトリエが南か西に配置される。レストランの厨房
 とSPの関係から南はレストランだな。アプローチも景観も川沿いの遊
 歩道が期待できる。
・吹き抜けを何処に設けるかで展開が変わりそうだが、ホワイエが眺望を
 配慮するようになっているので、エントランスホール、ホワイエとも川
 側の開けた眺望を積極的に取り入れよう。
・課題文の条件を拠り所に展開すると、何となく左の図のようにまとまり
 そうだ。

・2階は常設展示室と市民ギャラリーが指定となっている。計画の留意点
 に来館者と搬入経路が交差しないようにとなっているが、常設展示場ま
 で要求しているのだろうか?
 常設展示場の展示品はしょっちゅう入れ替えるわけ土はないので、わざ
 わざ搬入路を設ける必要もないと思うが?


E.<面積検討で構想を練る。>
・機能図をいくら進めても、面積の根拠が無ければ絵に描いた餅だ。
 分かる範囲で面積を書き出してみよう。
・指示があったり想定できる面積が、1,560uだから、目標値2,000uを割
 ると1.28(その他係数≒1.3)になる。
・1階の建設可能面積は、メッシュの数から判断すると1,022u。
 1階に想定した室の合計のその他係数1.3を掛けると、1,222uで建設可
 能面積より大きくなる。→1階想定の内?マークの室を2階に回す。
・1階候補面積 820×1.3=1,066u≒1階建設可能面積
 2階候補面積 740×1.3=962u →吹抜を考慮するとほぼ1階床面積。


F.<各階のプランニング>
・位置が明解な室や大きな室から優先して位置取りをする。この時1つの
 階を完全に決めるのでなく、1階2階を往復しながら決めていく。
・時にはスパンも変更する必要もある。
G.<エスキス図の完成・チェック>
・1/400のスケールで細部まで検討する。
・作図段階に入ったら、一心不乱でただ書くだけの状態までエスキスを詰
 める。(十分詰めて無く、作図段階で考え込むのが最も時間のロス。)
・作図前の最後のチェック!


 あれ〜ぇっ!さっき読んだときには良く読めなかったけど、公園駐
 車場に車出入口って読めるぞ! トラックヤードの真ん前みたいだけど、
 これって、ヤバクねぇ〜!・・・・・

 それに、エントランス周りが窮屈だし、それに南からのアプローチは出
 来るけど、東からは創作広場経由でしかアプローチ出来ないけど、これ
 もヤバクねぇ〜!

 予定のエスキス完成まで後30分だけど、焦ってくるなぁ。・・・・

 兎に角、動かしてみよう!



H.<計画変更>

・まず、トラックヤードを1スパン北へ移動してみよう。

・荷解場が警備室の近くになりチェックを受けやすくなり、それは良い事
 だが階段・EVが管理部門から離れてしまうな。
 職員動線と搬入動線の事で何か書いて有ったな。・・課題文を読み直す。
 「公開部門と非公開部門とを適切にゾーニングし、来館者動線、職員動
  線及び搬入経路が交差しないような計画」・・・
 来館者と搬入動線のの分離は当然として、管理動線と搬入動線の関係が
 問題だ。全く無関係と言う関係でないだけに、どの程度意識するかだな。

 原理主義的に考えると建築でなくなってしまう。
 管理諸室をまとめ、専用の廊下を計画すれば良いんじゃないの?
 2階の学芸員室が少し問題だが、2時間に迫ってきた!減点覚悟だ!


・車いす駐車場はどうしよう。大事なアプローチが、こんなんしか取れま
 せんでしたじゃ情けないしなぁ。
 思い切って研修室を2階に上げてピロテイ駐車にするか。そうすると、
 西側公園からのアプローチも確保でき、公園と一体となった美術館が提
 案できるぞ。


・アプローチ関係は随分と良くなったが、研修室を2階に上げると問題が
 有るのでは?展示部門はすべて2階に計画するとなっているが、他の室
 を2階に計画しちゃ駄目となっているかどうかだ。
 ホワイエが問題か?ホワイエは展示室部門として扱っている。そこに他
 の室を絡ませるのは問題なんだろうな。まぁ、最初の案はそう感じてま
 とめたが。

 研修室が展示部門に混じって違和感があるか?・・・
 市民ギャラリーの方がかえって騒がしいような気がするが・・・
 おっと!持ち時間の2時間過ぎてるじゃないか。

 (駐車場出入口の発見からとんだ方向に進み、混乱の中エスキスを切り
  上げ、先に発表したエスキスとしたのでした。)





                          


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◆今日はここまでとします。

  試験元も試験が終わったら直ぐに課題をインターネットで発表してくれないかなぁ。そうしたら、こ
 んなドタバタ劇は演じなかったのに・・・模範とするような内容ではありませんが、参考にして下さい!

 でも、皆さんの中にも、普段しないことを遣ってしまう。そんな魔が差したような行動をとった経験は
 有りませんか?
 1年に1回の試験!失敗は許されない!と、どうしても受け身になってしまう。そんな気持ちが、普段
 の精神状態とは違う行動を起こしてしまうのでしょう。
 でも一番気を付けたいことは、課題文に忠実にあろうとして、また課題文の一字一句に過剰に反応して
 あれもこれも満足するにはと、まるでジグソーパズルを解くような姿勢にあることです。そうすると、
 課題文を忠実に守ったつもりが、結果的に建物でなくなっている事ですね。

 課題文の細かな解釈の差や、ウエイトの置き方には色々と違いが出てきます。でも、最後は建物として
 どうなんだ?ってことですよ。
 
 
◆時々更新します。今後も続くよ!乞うご期待!

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