~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H21.7.19記》
《H21.7.28改編》
■ 平成21年度設計製図試験対策−5
◆設計製図試験制度の見直し。
2005年11月に発覚した構造計算書偽装事件から始まった建築業界の改革は、建築士試験にも大きな影響
を与え、今年が建築士試験制度の見直し元年に当たるのは皆様ご存じの通りです。
改正の概要については昨年11月28日に建築技術普及センターから、設計製図試験については「構造及び
設備に関しての記述、図的表現」が増え、試験時間が1時間延長されて 6.5時間になったと発表されま
した。その他建築技術普及センターでは、建築士試験に関する情報を掲載しているので参考にして下さ
い。( http://www.jaeic.or.jp/ )
対策−5では、設計製図試験の制度変更を探っていきたいと思います。
【一級建築士試験の試験内容見直し】
そもそも見直しは、平成19年12月10日に中央建築士審査会が発表した「一級建築士試験の試験内容見直
しについて」で大枠の方針が述べられている。(以下建築技術普及センター資料から転載。)
平成19 年12 月1 0 日
中央建築士審査会とりまとめ
一級建築士試験の試験内容見直しについて (文中のアンダーラインは筆者の注釈)
構造計算書偽装問題を踏まえ、建築士の資質、能力の向上等を目的とした建築士制度全体の見直し
の一環として、中央建築士審査会において、一級建築士の試験内容の見直しについて、以下の通り、と
りまとめを行った。
国土交通省及び(財)建築技術教育普及センターにおいては、平成21年度試験からの見直しが円滑に
進むよう、実務的な準備を進めて頂きたいと考える。
(注釈)
冒頭に構造計算偽装問題を踏まえと改正に当たっての動機が述べられています。
計算偽装と建築士試験とは何ら因果関係が有るとは考えられないし、試験の改正で計算偽装が防げる訳
でもないと考えますが、事件をきっかけにこれまでの試験が抱える問題点を解決しようとした点は評価
できるのではないでしょうか。後はどのような実務的な準備を進めるかを期待したい。
[見直しの基本的考え方]
○ 建築設計の高度化・専門分化に留意した上で、建築設計全般に関する基本的な知識・能力等を確認
するとともに、専門分化している建築設計を調整し、取りまとめていく基本的な知識・能力等につ
いても確認できる試験内容とする。
○ 建築設計の実態からみて、出題分野のバランス、出題内容を見直す。
○ 現在の試験内容と比較して、受験生に過度な負担を強いることのないように留意する。
○ 試験内容見直しは平成21年試験からとする。
(注釈)
・近年の高度化、専門化した設計業務の中での建築士の役割、方向性が述べられている。
試験が問うものは、設計全般に関する基本的な知識であり、専門分化したものを調整し取りまとめる
能力としている。
・従来は公共性のある複合建築物が良く出題されていたが、偏らないように見直したいとしているので、
実務に近い身近な課題も予想される。
・改正試験は、現状より過度な負担をしないようにすると言っているから受験者には有り難い。
[見直しの方向性]
1)学科試験
○ マネジメント、環境・設備、建築士法や職業倫理、構造全般に関する出題を増加させる等の見直し
を行う。
○ そのうえで、現行の学科T(計画)について、「計画」と「環境・設備」の2つの科目に分離する。
○ 具体的な科目及び科目ごとの設問数は、
@計画:20問程度、A環境・設備:20問程度、B法規:30問程度、
C構造:30問程度、C施工:25問程度
とし、これまでの五枝択一方式を四枝択一方式に変更する。
○ なお、試験時間は現在の合計6時間から、30分〜1時間程度延長させる。
(注釈)
・学科に於いては、従来の建築技術面だけでなく、偽装の背景になった面の強化が図られている。
・環境、設備の科目が増えたのは、現状での建築設計の重要度からして当然の流れと思う。
・基本がしっかりしていれば、五枝でも四枝でも同じだが、時間的には歓迎したいところだ。
2)設計製図試験
○ 現行の設計課題における要求内容は概ね維持したうえで、周辺環境に配慮した建築計画、配置計画
等を要求することとする。
○ 現行の設計課題に加え、記述・図的表現等の手段により、構造設計や設備設計の基本的な能力を確
認する出題を行う。
○ なお、試験時間は現在の合計5時間30分から、30分〜1時間程度延長させる。
(注釈)
・計画に当たっては、周辺環境に配慮した計画を明記している。これは採点上の大きなポイント。
・一昨年から始まった傾向だが、今年度からは更に強化されそう。構造、設備の基本学習が要求される。
・時間延長は歓迎だが、要求内容が増えたのでは却って受験者の負担になってしまう。
3)その他
○ 今回の試験内容見直しに併せ、学科試験に合格したものの設計製図試験に不合格となった者に対し、
次回試験においてのみ認めている学科試験免除について、次々回までの免除を認めることとする。
(注釈)
・従来の設計製図試験は1回だけリターンマッチを認めてきたが、新制度では2回のリターンマッチが
認められることになる。但し、新制度の学科試験を合格したものから適応されるから、今年のリター
ンマッチ組は適応外だ。是非今年は合格しよう!
・この制度は受験者の負担を軽減させるためのものか、設計製図試験の難易度が上がるための救済なの
かは定かではない。設計製図試験を受ける機会が増えたからと言ってダラダラと取り組んでも仕方が
ない。1回でピシッと決めよう!
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※上記の改正方針は理解できても、具体的にはどのようになるかは不明で、却って不安になりますね。
「E&A」では、昨年の合否結果から新しい制度の傾向を探ろうとあれやこれやと試みました。
ところが、その後、本年7月1日に「見直しの具体的対応について」が追加発表されました。内容的には
以下の通りです。従来では試験元がこのように具体的な改正の内容を事前に発表するのは考えられない
ことで、世の中も随分と変わった来たなと感じます。
「E&A」が要望していることが、少しずつでも叶えられるのは嬉しい限りです。
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【試験内容の見直しの具体的対応について】 (以下建築技術普及センター資料からの転記)
下記の文章では解りづらいので、更にH20年度課題文を例に新旧の違いを参考出題例として発表して
くれている。以下をクリックして下記文章と見比べて読まれたい。
・ 見直しのイメージ(平成20年試験問題を例にした場合)
一級建築士試験設計製図試験内容の見直しの具体的対応について
平成2 1 年6 月1 9 日
中央建築士審査会とりまとめ
○ 建築設計全般に関する基本的な知識・能力等を確認するために、
・「設計条件」における「所要室」に関し、室構成や床面積を細かく指定し、これに従った設計図書の
作成を要求する従来の方式を改め、室構成や床面積を大括りの設定とするなど、設計の自由度を高
める出題とする。
・「設計条件」において、構造設計、設備設計に関する設計条件を設定し、これに対応して、以下の図
面等を要求するものとする。
*平面図に耐力壁、設備機器・設備シャフトの位置等を(追加的に)図示
*梁伏図、矩計図等を(新たに)作成
*計画の要点等の記載項目、記載内容の充実
建築計画(ゾーニング、動線、景観への配慮等)、構造計画(構造種別、架構形式、耐震計
画等)や設備計画(空調設備、給排水衛生設備、防災設備、電気設備、環境負荷低減等)に
関し配慮した事項、周辺環境に対し配慮した事項などについて、記述(又は簡易な図示)さ
せる。
(注釈)
1.細かい設定を止め大括り(おおくくり)の設定なので、必要不可欠な所用室は自分で判断して設け
ることになる。課題の建物の概要を学習することだ。
2.新試験では構造、設備に関する知識能力を重視している。単に知識の判定ならば学科試験で充分と
思うが、知識を実務の設計に反映させるのを要求している。
3.計画の要点の記載項目について具体的に列記してくれているので、事前に充分に準備するのが合否
のポイントだろう。
○ 専門分化している建築設計を調整し、取りまとめていく基本的な知識・能力等を確認するために、
・合格基準の設定に関し、配点構成を「空間構成(*1)」と「意匠・計画(*2)、構造、設備」に大別
し、「空間構成」に関し、足切り点を設定するものとする。
(*1):建築物の配置計画、ゾーニング・動線計画、所要室の計画、建築物の立体構成等
(*2):図面表現、所要室の機能性・快適性等
(注釈)
1.採点の方針が記してある。「空間構成」は文字だけを見ると「立体構成」を想定しがちだが、*印
の注釈を見ると、立体構成の他に建築設計の基本的能力(ゾーニング、動線等)を言っている。
「空間構成」は基本的能力が故に足切り点を設定したのだろう。
2.まず、「空間構成」の基本能力で選別し、クリアした者を次の「意匠・計画、構造、設備」面で詳
しく採点する2段階採点と言うことだろう。
○ 現在の試験内容と比較して、受験生に過度な負担を強いることのないように、
・「設計課題(設計対象の建築物)」に関し、異なる機能を複合させた建築物を出題する従来の方式を
改め、比較的シンプルな用途の建築物(主たる機能の部門とこれに関連する部門からなる建築物)
とするなど、ゾーニングや部門間の動線に関する設計条件を簡素化した出題とする。
・ 要求図面は、配置図、平面図、断面図、立面図、伏図、矩計図等の図面のうちから4面程度とし、
その他に計画の要点等(1問あたりの記述のボリュームは従来と同程度とし、10問程度)と面積
表を要求する程度とする。
(注釈)
1.従来の複合課題を改め、シンプルな用途(単一用途)の建物とする。
2.従来のパズル的な試験を改め、縛りの少ない自由度の高い設計試験。
3.メインの室名のみを与え、付属する必要室は用途、面積の範囲内で自分で設定する。
4.製図:従来の4面程度。但し、年によっては伏図や矩計図の出題もある。
作図には、構造要素や設備要素の記入を要求する。
5.記述:別紙(A3判)に計画要点を10問程度記述。→記述ボリュームは従来通りでも、10問は
かなりのボリュームだ。いかに要領よく要点を列記できるかがポイントだ。
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(解説)
「E&A」では、従来の試験は指定項目が多く、まるでパズルを解くようだと指摘してきた。
今回、発表された改正設計製図試験は、或る課題に対して自ら考えて計画する本来の設計能力を試す試
験になりそうだ。
建築主から大方の要望事項を聞き、それを設計者が敷地や周辺状況等を考慮して自ら計画提示する。い
わゆる実務に近い試験に近づけたと言って良い。
内容的には、無理矢理な複合建物よりも単一建物に絞ったことは、建物が要求する基本的な動線計画や
ゾーニング計画を見ようとするのだろう。楽になった反面、建物の用途が持つ基本的な機能をしっかり
と学習することが求められる。
作図に於いては確実にボリュームは増える。構造面、設備面の狙いもはっきりしている。これらに対し
ては、ややアバウトな表現で済んでいたが、プロとしての計画や表現が要求されるだろう。
10問の計画の要点のボリュームは結構大変な量だ。1時間の延長は作図ボリュームの増加に有る事が
はっきりした。
より実務に近い試験になることがはっきりしてきたが、実務と違うことは極短時間に計画、作図しなけ
ればならないことだ。試験元が求めているのは、最良の計画案を求めているのでは無い。建築士として
の基本的技量を試す試験なのだ。これは試験制度が変わっても変わらないことは肝に命じた方が良い。
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◆ H17年11月17日に国交省が公表した構造計算書偽装事件(通称姉歯事件)から始まった建築に対す
る不信は社会を大きく動かしました。これまでも建築業界は色々と問題を抱え、特に金にまつわる
面で社会一般からは胡散臭い業界と感じられたいたのは残念な事です。
しかし、姉歯事件は金にまつわる問題でなく、設計及び管理に関する構造的な問題としてクローズ
アップされました。ほんの一部の者がしでかした不祥事ですが、これを機に審査業務、建築士資格、
建築士試験等多くの見直しが進められました。
中にはお門違いの改革も有りますが、これから始まる建築士試験改革は、今までの矛盾を改正する
ものとして、概ね喜ばしいことではないでしょうか。
7月26日は、制度改革後の第1回目の学科試験が有ります。ご検討を祈ります。次は製図試験です。
設計製図試験対策は、合格発表が有ってからでは遅いですよ。
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