~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H19.9.18記》
■ 平成19年度製図試験対策−3 《H19.10.3追記・編集》
設計製図の課題発表が有ってから、早くも2ヶ月近くが経過しようとしてます。
皆さんも今年の課題の「子育て支援施設」について朧気ながら概念は掴めたと思います。資格学校や通信講
座に参加してる皆さんは、既に課題に取り組んで頭を悩ませながらも力を付けているのではないですか。
数多くの課題を経験して、身体で試験時間の 5.5時間を感じるのは設計製図試験では重要なことです。
慣れない鉛筆作図では最初の内はどうしても弱い細い線になってしまいますが、作図を重ねる度に力強い線
が引けるようになって、図面らしい図面になってきます。
設計製図の試験は、完成された図面を項目毎にチェックしなくても、一目見ただけで何となく合否が見えて
きます。いわゆる様になっている図面に仕上がっていること、これが最低条件ですね。
問題は内容です。内容と言っても先に述べたように、提案の優劣でなく課題で要求されていることが忠実に
反映されているかどうかです。
【課題で要求されていること】
課題文に設計条件が記されていますが、始めは大まかな要求から始まり、後に従って具体的な細かな事項が
要求されています。
慣れていない最初のうちは、どうしても最初の漠然とした要求よりも、後の数字で記述された具体的な要求
事項が印象に残ってしまい、どうでも良いような小部屋の面積を忠実に正しく納めようとしてしまいます。
それは、まるでジグソーパズルを解いているみたいですね。
ジグソーパズルではどんな小さなピースが残っても完成とはなりません。だから全てのピースが納まるよう
に、必死で当てはまる箇所を探します。形ばかりを見て判断するとトンでも無い図柄になってしまいます。
ピースの形の他に色彩などを含めて解かなければなりません。
ジグソーパズルは根気よく何時間も掛ければいつかは解けるでしょう。しかし、設計製図試験は、限りある
時間に完成しなければなりません。それに、建築設計の解答はジグソーパズルのように正解は1つではない
のです。
出題者の主旨に沿って、建物らしさが浮き出てくればOKではないのでしょうか。勿論、それぞれの回答案
には優劣は出てきますが、品評会ではないのだから金銀銅の表彰台に上らなくても、浮かび上がった姿が建
物らしく有れば建築士の資格は得られます。だから細かいことに目を奪われずに、出題者が望んでいること
は何かを掴んで下さい。
【今年の課題】
「子育て支援施設のあるコミュニティセンター」ですね。これも、具体的な記述のある「子育て」に目が向
かいがちですが、主題はコミュニティーセンターで有ることは忘れないようにしましょう。
「子育て支援施設」と「コミュニティーセンター」の複合施設ですが、試験ではこの施設がどうあるべきか
を提案するのでなく、与えられた条件の下で如何に建築として問題のないものに仕上げるかです。
受験に当たっては、子育て支援施設の概念が無くては計画は出来ないでしょうから、皆さんも既にインター
ネットなどで調べられたと思います。支援施設とコミュニティーとの関わりを想定した「本試験出題予想」
なるものまで扱ったホームページを見た人もあるでしょう。
しかし、それらは参考例の1つに留めて下さい。実物の参考例も同じことです。試験を競馬の予想屋に託す
訳にはいきません。どんな条件になろうと、その中で計画できる力が有るか無いかでしょう。
【設計製図での力】
1.設計条件の把握・・・兎に角、課題文を丁寧に読むこと。出題者の要求をまず押さえて下さい。
(時には、要求事項よりも概念が勝ってしまうことが有る。ご用心!ご用心!)
2.建物廻りの要素・・・周辺環境を把握し、建物廻りの要素(広場等、駐車場、自転車置場など)からア
プローチ及び配置計画を想定する。
3.階の割り振り ・・・計画の中で頭を悩ますのが所要室の階の割り振りだ。
全ての室が階指定をして有れば何も問題はないのだが、そんな親切な問題は有り
得ない。親切どころか却って頭を悩ますことになってしまう。それこそ、答えは
1つだけのジグソーパズルだ。
頭を悩ます原因の1つは、ボリューム(面積)がはっきりしないからだ。
所要室の面積は、設計者に任されている部分があり、全てに面積指定はされてい
ない。また、所要室に表われない廊下などのボリュームが把握しにくい。しかし、
面積想定をしないで計画はできない。漠然と割り振ってしまうと、3階は窮屈な
のに、2階はゆるゆるで無駄空間があちこちに有るって事になる。
4.ボリューム算定・・・アバウトでも、まず想定してみることだ。手掛かりは表示されている面と設計条
件の床面積の中間値。中間値を明示されている面積の合計で割る。その答えが、
適宜や廊下を含んだ面積を掴むのに役立つ。
<例>
・設計条件床面積:2,500u〜3,000u→中間値:2,750u
・所要室で明示されている面積の合計:1,800u
2,750÷1,800=1.5(答え)
・答えは1.5となる。すなわち、明示されている部門の面積に1.5倍すれば、
廊下や適宜を含んだ部門のボリュームになるって訳だ。
・1階のボリューム→→敷地面積からその他の施設部分を引いてみよう。
残りが最大に建てられる面積だ。
───────────────────────────
───┬────┬─▽───┬──┐ ┌─────
│ P │ B│広場│ │
├┏━━━┷━━━━━┷┓ │ │ P:駐車場
│┃ ┃ │ │ B:自転車置場
│┃ 最大ボリュームを ┠─┤ │
│┃uでなく、グリッド ┃P│ │ ┏━━┓
│┃数で把握する。 ┃ │ │ ┃ ┃1階の最大
├┗━━━┓ ┠─┤ │ ┗━━┛ボリューム
│ テラス┗━━━━━━┛ │ │
└────┴────────┤ │
おおよその1階のボリュームが掴めたら、上階の形状を想定する。
想定は床面積と1階ボリュームで判断する。
<例>
・中間値2,750u÷49u(7×7スパンの場合)≒56G(グリッド)
・56G−23G(1階グリッド)=33G(2階、3階の合計)
・33G+3G(吹抜、高天井など面積に算入されない部分)÷2=18Gで2階、
3階のボリュームをおおよそ掴む。
勿論、2階、3階が同じボリュームとは限らないが、1つの物差しとして使える。
5.部 門 配 置・・・課題文から部門のつながりからを判断して、各階に部門ごとに配置する。
1階・・・共用部、管理部門、子育て部門の一部、その他共用室=23G
2階・・・共用部、子育て部門の一部、コミュニティ部門の一部=20G
3階・・・共用部、その他の共用室、コミュニティ部門の一部 =16G
合計・・・59G−3G(面積に算入されない部分)=56G OK
※この段階はまだ、室の配置は行わないのがポイントで、大掴みのグリッド数を
確保するって感じ。
<例>
┏━━┯━━━┯━━━┓ 1階構想:23G
┃管理│ │喫茶 ┃ :共用部を中心に各部門のグリッド
┠──┤共用 ├───┨ 数をまとめて確保する。
┃ └┐ │展示室┃
┃ └──┴───┨
┗━━━┓子育て部門 ┃
┗━━━━━━┛
┏━━┯━━━┓───┐ 2階構想:20G
┃ │ ┃ 屋上│ :吹抜、高天井部分を含めて検討。
┃子育│ 共用┗━━━┓ :混合フロアーなので、部門のグリ
┃支援└┬──┤展示室上部 ッド数をゾーンに分けて確保する。
┃部門 │コミ└───┨
┗━━━┓ュニティ部門┃
┗━━━━━━┛
┏━━┯━━━┓
┃ │ ┃ 3階構想:16G
┃ │ 共用┗━━━┓ :階全部が単一部門なので配置は楽
┃ └───┘ ┃ だが、更に同一の用途の室をまと
┃ コミュニティ部門 ┃ める。
┗━━━━━━━━━━┛
6.共用部と各部門・・・建物はエントランスから始まる。
建物内の動線は、エントランスを起点として始まる。エントランスを始め、共用
EV、共用階段、共用トイレなど、部門に関係なく全ての人が利用する共用部を
強く意識すること。
共用部は全ての部門へのアプローチゾーン。どの部門にも関わるニュートラルゾ
ーンと言える。他の部門に行くときはニュートラルゾーンを経由して行きます。
アプローチ
↓
↓
┌────┐ ┌──────┐ ┌─────┐
│子育て │ │エントランス│ │コミュニ │
│支援部門│←──→│ホール │←──→│ティー部門│
└────┘ │EV階段WC│ └─────┘
└──────┘
↑ ↑
↓ ↓
┌────┐ ┌────┐
│その他の│ │サービス│
│部門 │ │管理部門│
└────┘ └────┘
7.部門共用部と各室・・・建物全体の共用部が有るように、部門の中にも部門の共用部(廊下、ロビー、
トイレ等)が有ることを認識すること。
┌──────┐ ┌──A部門───────┐
│全体の共用部│ │┌───┐廊下 ┌─┐│
│ │←───→│ロビー├──┬─┤室││
│EV階段WC│ │└┬──┘ │ ├─┤│
└─┬────┘ │廊│ ├─┤室││
│ │下├部門WC │ ├─┤│
┌─┴───┐ │ ├──┬──┴─┤室││
│ B部門 │ │┌┴┐┌┴┐廊下 └─┘│
└─────┘ ││室││室│ │
│└─┘└─┘ │
└────────────┘
8.共用部の区別・・・部門の共用部(廊下等)と全体の共用部(ホール・廊下等)がごちゃ混ぜになった
計画を見ることがあるが、共用部をしっかり区別し振り分けることがゾーニングで
有り、異種動線を考慮することなのだ。
[例−T]
EV WC
┌┴──┴──┐ ┌──A部門──────┐
┌───┐ │全体の共用部│ │┌───┐廊下 ┌─┐│
│B部門│←─→│ ┏━━┳━←────→││ロビー├─┬─┤室││
└───┘ │ ┃ ┃ ├─┬─┐ │└┬─┬┘ │ ├─┤│
└─╋──╋─┘ │C│ │廊│ EV ├─┤室││
┌┃┐┌┃┐ │部│ │下├WC │ ├─┤│
│室││室│ │門│ │ ├──┬─┴─┤室││
└─┘└─┘ └─┘ │┌┴┐┌┴┐廊下└─┘│
A部門の室が全体共用部 ││室││室│ │
から直接出入り。 │└─┘└─┘ │
ゾーニングも乱れ、動線 └───────────┘
も他部門と交差した悪例。
[例−U]
┌─────┐ ┌──────┐ ┌──────────┐
│A部門の室│←──→│全体の共用部│ │廊下 ┌─────┐│
└─────┘ @ │EVホール │←─┬─→│A部門の室││
┌──→│WC、階段等│ ││A └─────┘│
│ └───↑──┘ ││ ┌─────┐│
┌──────↑───┐ ┌─│─┐ │├─→│B部門の室││
│ ┌───┤ │ │ ↓ │ ││ └─────┘│
│ ↓ 廊下↓B │ │ A │ │└─→┌─────┐│
│┌───┬───┐ │ │ 部 │ │ │B部門の室││
││C部門│C部門│ │ │ 門 │ │ └─────┘│
││ の室│ の室│ │ └───┘ └──────────┘
│└───┴───┘ │
└──────────┘
@:部門のゾーンから離れて直接共用部から出入りする例。(前述のTの例)
A:他の部門に紛れ込んだ例。
B:部門間の移動は部門内の廊下を使う。ゾーンも動線も考慮された例。
9.部門内の配列・・・部門内の室の配列は整然と配列。同じ部門でも更に同類のものは1箇所に集める。
小部屋は尚更のこと。外部側は採光・通風から居室を優先、内部側には非居室を意
識する。
10.廊下は計画的・・・室を配置してから廊下で結ぶ人がいる。最初から計画的に設けないとクランク状の
廊下になったり、長い廊下になってしまう。
室+廊下=1グリッドor2グリッドと言う風に室と廊下をセットで進める。
これを徹底すると自然に整理されてくるし、適正なスパンが見えてくる。
凡例 ●:柱
━:外壁
─:間仕切
6m 6m 6m 6m
●───●───●───●───●
2m ┌───┬───┬───┬─┬─┐ 廊下を通す意識を強く持つ。
│ 室 │ 室 │ 室 │室│室│
5m │ 30u│ 30 │ 30 │15│15│
●━━━●━━━●━━━●━┻━●
6m 6m 2m 4m 6m
●━━━●━━━●━┳━●━━━●
┃ 室 │ │ 室 ┃
7m ┃ │廊│ ┃
┃ 84u │下│ 70u ┃
外部 ●───●───● ├─●───● 非居室は内側。
┃ 室 │非居室│ │ 室 ┃
7m ┃ ├───┤ │ ┃
┃42u │非居室│ │ 70u ┃
●───●───● ├─●───●
┣─────────┘ ┃
11.適正なスパン割・・・上記のグリッドを意識して計画を進めても、室の大きさからグリッド単位で整理
されないことがある。こう言うときはスパンが不適切な場合が多い。
適正なスパン割は所要室の面積がヒントになるが、最近の試験は単一スパンで展
開できるほど単純では無い。
最初に想定したスパン割でグリッドプランを徹底して進め、その中から適正なス
パン割りを見いだす。
グリッドを意識しないまま室を配置しても、柱芯から僅かにずれた位置に間仕切
り壁が有る室が多くでき、汚らしい平面プランとなる。
6m 6m 6m 6m
●───●───●───●───●─
2m ┌────┬───┬─┬─┬───┬ 一番左のスパンを7mにすると
│ 室 │ 室 │室│室│ 室 │ 全体が綺麗に納まる場合があ
5m │ 35u │ 30 │15│15│ 30 │ る。
●━━━●┻━━●┻━┻●┻━━●┻
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※
いつの間にか10日余りとなりました。最後の一踏ん張りです。続きはまた直前にお送りします。
では、健闘を祈ります。
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