~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H17.11.13記》
■ 設計製図試験で思うこと


『もし、後30分掛けて冷静に検討してたら』をお送りしようと思いましたが、
所詮、時間内に仕上げる試験です。理想を追求する試験では有りませんので、止めることにしました。

この試験で大事なことは、『求められていることを、時間内に如何にまとめるか』に、つきると思います。
時間を掛けて理想の案を作り上げるものとは違います。多少欠点が有っても、まとめ上げることが重要な試験です。

だから、国が発表する解答例も決して理想案でなく、合格レベルの例と言うことになります。
解答例が楽しみですね。





上記の文は、昨年の製図試験の後、試験を振り返って書いた物です。例年なら、エスキスがまとま
らずに時間切れの人が多くいました。
レベルWに該当する人の大半は、時間内に書き終えなかった人と考えられます。
特に、設計の仕事を日常している人には多少のこだわりがあり、時間を気にしながらもより良いも
のを目指す傾向にあります。
そのために、設計の実力はありながらも試験には失敗をする人が多く見られたので、上記のアドバ
イスを送ったものでした。
しかし、今年はちょっと勝手が違いましたね。 例年は、3階建てで複雑な条件がびっしりと書かれていたので、5.5 時間の中でまとめ書き上げる のは至難の業でしたね。エスキス時間1.5〜2時間の中で、とても納得のいく計画など出来るもので は無いですね。 ところが、今年は階数が2階建てでした。条件も余り細部にわたり要求されていません。 受験者の皆さんも「やったぁー!2階建て!楽勝!」と思ったことでしょう。2階建てだと作図時 間は随分違いますね。その証拠に、今年は書き終えなかったと言う人は余り聞きませんね。時間を 持て余したと言う人さえ聞きます。 ◆エスキス時間 今年の試験は易しかった。・・・・本当にそうなんでしょうか? ここ数年の課題は、事細かな条件付けが有り、まるでジグソーパズルを解くような試験でした。 しかし、今年の試験は、条件付けがあまり有りませんでしたね。 このことは、限られた条件の中で、受験者の皆さんに建物を深く考えさせる良い試験だったと、私 自身は感じています。 今年の課題は、作業よりも考える試験を目指したと感じました。そのために、作図時間よりシンキ ングの時間を与えたのではと感じたのです。 それにも関わらず、私自身の解答例は、「チャレンジ奮闘記」にも書いたように、速くまとめて掲 載しようと時間を短く設定した事が、少し仇となったようです。 まず、展示ホールの吹抜けを忘れているし、全体に荒いですね。強引です。もう一整理が必要なプ ランです。今年の課題だったら、もう少しシンキング時間をとれたし、とるべきでした。 ◆平常心 今年の課題は、既存建物を扱ったのが特徴でした。 これまで製図の試験は、新設建物を計画するものだとばかり思っていた者にとっては、サプライズ でしたね。しかし、現実は増築や改修工事は良くあることなので、こういう出題も有りなんですね。 要求されたものは、「既存建物保存と新設建物の一体化。」でしたが、受験者の中には、まるまる 保存して、一体化がどこかに飛んでった人が多く居たことです。いわゆる、既存空白ですね。 どうして既存空白の人が多く出たのか疑問に思い、原因を探ってみました。 つは、保存=手を加えないと先入観を持った人ですね。 つ目は、4.所要室の次に続く文章を誤って捉えたからでしょうね。 続く言葉は、「下表の室は、新設部又は既存部のいずれかに、すべて計画する。」となってました。 誤った人は、いずれかに=どちらか(一方)にと読んでしまい、Aで無ければBのどちらかに計画 すると解釈し、既存部に全部はいる訳がないから新設部にすべて配置したようです。 しかし、この文章だけを見ていると、そういう解釈も出来るかと一瞬思ってしまいますが、全体の 流れから考えると、いずれか=AとBのどこかにと考えるべきでしょう。 また、この文章の主眼は「いづれかに」で無く、「すべて計画する。」に有ると考えます。 試験での心理は不安定で、普段とは違った考えや行動をしてしまいます。細部にこだわらずに、文 章全体で解釈するように心がけることですね。 実は、これがなかなか難しい。私もかなり深読みしてしまった。 既存建物に対して、ファサードを残す条件に過敏に反応してしまった感が有る。「玄関は玄関とし て残す。」と言う思いこみ、と言うかこだわりが顔を覗かせた感じがする。 さすがに、既存の玄関をそのまま玄関として使うには、駐車場の絡みや、その他の諸条件から無理 だと判断したが、この思いこみ、こだわりのために動線ルートが増え、事務所からの監視が複雑と なってしまった。 また、広場からのアプローチ。広場が「公園と一体に利用」とあったので、公園側からのアプロー チも有りと設定して進んだ。この解釈自体は間違っているとは思わないが、広場の位置に固定観念 があった感がする。 多目的広場は、公園と一体に利用するという縛りしかないのに、来館者のための広場との思いこみ が強すぎた。 多目的広場を南に寄せて、エントランスの近くに配置すれば、もっと楽に計画できたのにと、今さ ら思ってしまう。 この思いこみは、多くの受験者にもあったみたいだね。 掲示板を覗くと、「建物から多目的広場への出入口がない!」「課題に要求されてないから、設け なかった。」「課題にいちいち書いてなければ計画しないなんて、建築士の資格無い!」など広場 出入口論争が行われていました。 ◆課題の要求 「課題文に無い事は、考えるない方が良い。」と言われてきました。「条件を変えると、大減点に なる。」とも教えられてきました。確かにそうだと思います。 昨年(平成16年)の課題のように、建物の真ん中を自由通路が横切り、複雑になった動線を解消する ためにEVを勝手に増やすことは、条件違反となるでしょう。 また、広場○○u以上となっているのに、確保できないから少な目に計画する。などは、やはり条 件違反でしょうね。 このように、与えられた数値や位置関係を変えてしまうと、条件違反になって減点されても仕方が ないですね。EVの増設などは減点で済まないかもしれません。 しかし、広場出入口はどうなんでしょう? 勿論、建物から広場へ通じるルートは必要ですね。この建物は、公園に避難した人を支援しなくて はならないからね。 出入口の問題は、課題に書いてあるからとか、書いてないからとかの問題でなく、プラン次第と言 う事じゃないのかなぁ。今年の課題は、この辺の所を試している様な気がするよ。 私の計画のように奥まった位置に広場があり、エントランスからの動きがスムーズでない場合は、 出入口を設けた方が良いだろうし、広場がエントランスの近くに配置されて、建物←→広場←→公 園とスムーズに移動できれば、エントランス経由でも良いのでは。 今後、課題では明記しないけど、建物を見て判断させる傾向は強くなるのでは、と考えます。 ◆設計条件 製図試験は、設計条件に沿って進めるわけです。計画が結果的に条件を無視していると、条件違反 で減点になってしまう。試験制度は加点は無いそうだから、いかに減点を少なくするかですよね。 減点が少ない人は、建物が求められている内容を、しっかり押さえている人でしょうね。 それは、T.設計条件に続く、主文(前文?)の数行に集約されていますね。ところが、まだ頭の 中が真っ白の状態で読み始めるので、漠然とした文章は、なかなか頭に残らない。後の方の所要室 の条件ばかりが、印象に残ってしまう傾向にあります。全文を読み終わった後に、もう一度主文に 目を通し、確認したいですね。 今年の主文を平たく言うと、「既存建築を活用して、災害時に支援活動の場となるコミュニティー 施設を計画しなさい。」でした。 もう少し具体的に@、Aの2つの事項が書かれています。Aは、ゾーニングと各部門の動線を記述 した例年お馴染みの文章です。計画すること自体がゾーニングすることと、動線を配慮することで すから、あえて記述する必要もないくらいですけど毎年記述されています。 ところが、今年の掲示板では、このゾーニングについて独特の論争が持ち上がりましたね。 「防災部門は1階で、学習部門は2階に、階分けしないと大減点だと。」 ゾーン分けの最も明瞭なのが、階分けです。同一階に2つの部門が混在すると、それを整理するの に一苦労しなければならないし、出来たら階分けにしたいですよね。 例年ですと、敷地の都合上どうしても混在するケースが多かったのですが、今年の課題は、敷地に 余裕があり、防災部門をすべて1階にまとめ、階分けするのは可能でした。・・・でも、だからと 言って階分けしないと大減点というのは、ゾーン分けを1つの方法しか認めないと言う乱暴な話で す。 (大減点を吹聴する人は、トリックを見破ったつもりなんでしょうね。) 2階に混在した皆さん、安心して下さい。混在しても共用部を挟んでゾーン分けが出来ていれば、 それでOKです。 ◆主観的な要求 今年の課題で最も意外だったのは、立面を要求したことに加え、主観的な調和を要求したことでし た。既存との調和?平面プランの一体化と同様に、調和とは何ぞや?・・・??? これは、デザインについてよく勉強している人ほど悩んでは無いですか? 最近、昭和や大正の名建築の一部を残し建設されるビルが話題に上ります。ほとんどのケースが、 既存に習って同じ外観に仕上げると言うよりも、質感的には対比させて互いに際だたせるものとな っています。そう言うすり込みがなされた人は、「調和」について真剣に悩んだでしょうね。 試験は試験と、割り切っている私にしても悩みました。「単純に壁面をそろえるとか、高さをそろ えるとか、同じ窓にすれば良いんだ。」と必死で心の中で叫びました。・・・それで、最初は、新 設のエントランスまでも既存に合わせてアーチを描いたんです。でもね、・・・調和って揃えるこ と?って、すっごく抵抗を感じて、直線に書き直しました。素直になれなかった。悩ましい!
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