~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H17.12.22記》
■ 標準解答例を見て思うこと
設計製図の標準解答例が去る12月20日、合格者発表に続いて発表されました。
標準解答例が発表されるのは、一昨年に続いて3回目ですね。
解答元も合格レベルの標準的な解答例と断った上での発表でしたが、皆さんは、どう感じましたか。
平成17年度一級建築士製図試験を疑似体験した者として、率直に感じたままを解答別に述べます。
以下、(財)建築技術教育普及センター発表の解答例と並べて読んで下さい。
←クリック
(クリックしても図面がダウンロードされない時は、下のURLよりAdobe Readerをインストールする
と見られますよ。)
http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep2.html
<標準解答例 @>
1.既存玄関の扱い
最初に目に飛び込んできたのが、玄関の扱いですね。
「おぉ、既存の玄関をそのまま建物の出入口として使っているじゃないか。」ってね。既存の建物
を残す要求で、既存にポーチ付きの立派な玄関が含まれているので玄関は玄関として残す。
これは至極素直な発想と考えます。
ただ私は、両開きの扉が車いす対策としては不十分と判断したため、新たに出入口を設けたのです
が、常時開にするとは「恐れ入谷の鬼子母神!」・・・常時開の表示が憎いね。(これ絶対必要)
2.サービス動線
玄関に面して管理事務所。・・・れれれっ!サービス駐車場からの動線は建物内横断?
サービス駐車場は、災害用備蓄倉庫と電気・機械室用か?
物品の動線は考慮したが、人の流れは少人数しか予想されないから問題ないとしたのかな?
今年の課題は、サービス用EVもなかったし、館内のサービス動線はさほど要求してないようにも
感じるけど。なかなか割り切れないなぁ。
昨年の解答例も、動線については色々と疑問に思う点が多かったが、どうも動線に関しては我々が
意識しているより、重要度は少ないのだろうか?
3.ゾーニング
1階が防災学習部門で、2階が集会・生涯学習部門か。階で部門を分ける。今年はこれが出来たん
だよね。でも、防災学習部門と共用部とは混在しているよなぁ。
設計条件Aで各部門のゾーニングと動線を考慮するようにとなっているけど、実際計画する中で全
て満足するのは難しいよ。これに余りこだわると、かえって建物として成り立たなくなるしね。
解答例−1は階分けのゾーニングだけど、試験元はゾーニングを階分けしないと駄目と考えている
のだろうか?
それはないよね。解答例−2はきっと混在だと思うよ。
4.各部門・各施設配置
<1F>
a.多目的広場
多くの人は、課題文の既存樹の誘導的記述から、多目的広場を東北に配置したんじゃないかな。
しかし、解答例−1は、見事に裏をとって表通りと一体化している。
これは、先の『設計製図試験で思うこと』の◆平常心の後半に書いたように、広場がメイン道路よ
りの配置で、建物と関係なしで自由に利用できるプランは有り得る事だよね。
ただ、多目的広場の設計条件に「災害備蓄倉庫との動線に配慮する。」とあるのに、両端に配置さ
れ長い動線となっているよ。「物理的につながっていれば、動線に配慮している。」これは無いよ
ね。それに、面積200uの形状が、甚だ宜しくないし、カフェテラスの前のスペースの巾が狭く、
公園と一体的利用とは、とても言い難いよ。
せめて、公園との境の植え込みを止めれば、一体化といえて良かったのに。
b.喫茶室
このプランは、課題文に関係なしに喫茶室と多目的広場とのつながりを先にイメージしたプラン、
って感じだね。
先に喫茶店ありきで、多目的広場がそれにぶら下がった。確かに、課題に関係なく喫茶室を計画す
るとなると、公園や表通りに面した位置を選ぶでしょう。
しかし、この課題で求められているものは、喫茶室のベストポジションでなく、この建物が災害時
に、如何に支援活動の場になるか等ではないのかな?これじゃ、喫茶室を最優先したって感じだよ。
エントランスとの位置関係で南東の多目的広場もあり得ると考えたが、この計画のように、まず喫
茶室ありきでの広場の位置には、はなはだ疑問を感じるね。
d.展示ホール
展示ホールは、防災意識を喚起する展示等に利用されるので、人々の目に触れやすい位置が要求さ
れるよね。当然、防災学習部門に関わらず、集会・生涯学習部門を利用する人々の目にも触れるの
が望ましい。その意味で、防災学習部門に属しているが、より共用部的な扱いをされているこの案
は共感を覚えるよ。(採点官は、こう言うところをチェックして欲しいな。)
ただ、ホワイエを兼ねているのに、まるで通路の交差点みたいに通り道となっている。階段への通
路部分は、面積に入れちゃ行けないよ。
階段を右へ少しずらせば通路を確保できるし、1,2階を見てもその方が納まりが良いよね。
電気・機械室への動線がなくなるって?そんなのは、展示ホール側から出入りしても良いし、収納
部分を前室にして出入りすれば、音の心配もないさ。
│ シアター │ 電気 │ │ シアター │ 電気 │
┼────────┤ 機械室 │ ┼────────┤ 機械室 │
□ □───┬┬─┬─□ □ □─┬────┬─□
展示ホール │収納/││ │ 展示ホール │前室/││ │
├┬┬┼┼┤ │ ├┬┬┼┼┤ │
││││││ │ ││││││ │
└┴┴┴┴┴─┘ └┴┴┴┴┴─┘
c.その他の室
見事に単純化されて、北側に室が並列されているなぁ。
確かに試験の計画案は、出来るだけ単純な方が良いよ。面白くも何ともないが、この方が整然と整
理されて見栄えがするよ。
整然と整理されていること、それが試験官受けすることに、間違いない!
<2F>
a.通路
全体に整然としてゆとりのある空間となっているのに、柱型を入れて2mの既存との取り合いが通
路となっているよ。ボトムネックの状態だな。
それ以外は、無駄な意味のない空間を残さないために、便所を2ヶ所設置したりして工夫している
なぁ。この辺はテクニックだね。
b.防火区画
吹抜けにも階段室にも防火区画表示が見あたらないぞ。・・・スプリンクラー設置してますって?
そりゃないね。屋上まで行く階段は、竪穴区画が必要だよ。・・・標準解答例だから、100点満
点ではないのは解っているけど、減点項目を示して欲しいなぁ。
5.立面
新設部の立面は、素直に既存へ習えだな。喫茶室だけがガラススクリーンで屋根もガラス屋根か。
ここにも喫茶室へのこだわりが感じるな。でも、喫茶室だけ浮いてない?
「調和」に関しては、いろんな意見が出るよね。
5.断面
エキスパンション・ジョイントカバーまでしっかり表示されているな。隙間が50mm程度しか開
いてないけど、この程度では揺れに対応しきれないよ。
今回は既存と新設建物だったから必然的にEXP・Jointがでてきたけど、新設でも場合によってはEX
P・Jointは必要だよね。だけど、掲示板を見ていると、受験者の中でEXP・Jointを知らない人が多
いのには驚かされた。学科で構造を勉強してきた人たちなのに、学科と製図が結びつかないのかな?
設計製図の試験は、学科で学んだ知識を製図に如何に反映させるかを問うて欲しいなぁ。
総評
1.5 時間から2時間のエスキス時間で、これだけ整理された案をまとめるのは大したものだと思う
反面、設計課題を結構無視して納まりやすく綺麗に並べたって感じだね。課題条件を読まずに、図
面だけ見れば建築として立派に成立する計画案だよ。
・・・設計条件を必死で反映させようと苦労した皆は、一体何だったんだ。
でも、これが制度の現実。この辺に合格の鍵が有るのかな?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H17.12.22記》
<標準解答例 A>
標準解答例 @と同じように、(財)建築技術教育普及センター発表の解答例と並べて読んでって。
←クリック
おぉ!これこれ!あの中央建築士審査会のTV報道の中で映し出された図面は、第2案だったんだ。
以前に一度見ているので、何かしら懐かしささえ感じてしまうね。
ぱっと見の印象は、何か凸凹で、解答例−1に比べて複雑な案って感じ。でも、この方が、課題の
要求を一生懸命に反映させようとしているのが伺えるよ。では、じっくりと見ていくかな。
1.エントランスの扱い
エントランスは中央に新設だな。既存の玄関は喫茶室の出入口か。なるほど。これだったら私の案
より出入口が絞れて管理が楽になるね。(既存の玄関をモニュメント玄関として残した私の案の方
が、こだわりすぎたって感じだね。)
エントランスを奥まで引き込んでいるのは、管理事務所からの管理をしやすくしたいという現れだ
な。それと、既存と新設との縁を切りたいとの思いが有ったのかな。
2.動線
この案は、サービス駐車場からの一連の動線も考慮されているし、管理部門がしっかりまとまって
いるぞ。サービス駐車場が2ヶ所に分かれているのは、備蓄倉庫用または災害用としているのかな?
公園→多目的広場→エントランスホールのルートがしっかり確保され、課題に沿った動線計画が感
じられるよ。
3.ゾーニング
1階が防災学習部門で、2階が防災学習部門と集会・生涯学習部門との混在だな。ゾーニングの階
分けでないと大減点なんて噂があったが、そんなバカな話は無いよ。階の中でゾーニングが出来て
いれば良いんだよ。・・・んっ!防災ライブラリーが離れているぞ!まぁ良いか。防災ライブラリ
ーは集会・学習部門を利用する人にも広く利用して貰いたい室だし、室の中身を見ずにゾーニング
を語ることの方が問題だよ。
ゾーニングは動線との関係を考えるべきだよ。関係者以外無闇に立ち寄って欲しくない室は、大勢
の人が行き来する所から離して配置するとか、関係のある室同士をまとめるとか、室の中身を分析
しなくちゃね。
4.その他
a.防火区画
解答例−1も防火区画が全く無視されていたし、解答例−2も階段は区画してあるものの吹き抜け
は区画してないし、又階段は区画しても外壁の90cm折り返し(スパンドレル)が不十分だし、
製図の試験は法的なことは考えなくても良いのかとも思ってしまう程だ。
だけど、いくら模範ではなく合格レベルの標準図と言っても、人の安全に関わる大事なことで作図
上の事はきっちり表現して欲しいな。そうしないと、無視しても良いんだと勘違いしてしまうよ。
建築士は人の安全を預かる責任重大な資格だよ。
b.構造
この案では3mと2.5mのキャンティレバーとなっているし、2階はラーメンフレームの梁無しか。
構造的にかなり無理したプランになっているなぁ。
被災者の支援活動の場どころか、ここが被災しかねないぞ。意匠的には梁は抜きたいだろうけど、
余りにもフレーム形状が悪すぎる。
勿論、満点の解答例では無いだろうけど、減点はどの位だろうか?特にキャンティの寸法は、次の
試験で皆が真似をしそうだな。
c.設備
今年の空調は空冷ヒートポンプパッケージ式だったので、機械室からのDSを考えなくて良かった
から少し楽だったかな?しかし、実際は屋外機までの配管スペースが必要だから、或程度まとまっ
たSPは要るよね。だけどWCの排水しか計画していないし、□学校でも、表示しなくても良いと
指導しているみたいだね。
d.寸法表示
今年の平面図の寸法は、解答例−1も同じだが例年になく間仕切り位置を細かく押さえて記入して
あるのが気になった。方眼が書いてある用紙だからつい省略しがちだが、面積算定に必要な程度を
要求している限りは、この程度は記入しろよと言う何だろうか?
5.立面
解答例−2の立面は、既にTVの画面で確認してた話題のカーテンウォールの立面だ。「既存との
調和」を課題に掲げて、これは無いだろうと言うものもいれば、全て既存に揃えるのは不自然と言
うものもいる。やはり言った主観的な判断は、試験には馴染まないのかも。設計条件の主文で唱っ
た割には、結論としてあれもOK、これもOKとなってしまった。
5.断面
こちらの案は既存と床レベルを変えた案だが、強いてレベルを変える必要は見あたらない。解答例
−1に対比する別案として提示したのだろう。深い意味はなさそう。
総評
解答例−2は冒頭で述べたように、課題に忠実に計画したのが伺われる。そのために建物としては
少し凸凹と形状が悪いし、構造的にも無理をしている。これは、短い時間内での計画だから止むを
得ないところだろう。
今回試験元は、いろんな意味で対比する2つの解答例を示した。その特徴を平たく言えば、
解答例−1:課題の要求には十分応えていないが、建物としてはまとまった内容となっている。
解答例−2:課題の要求を忠実に反映させようとしているが、建物としては少し問題を残している。
だろうか。
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一級建築士の試験制度も、合否の判定を四段階に分類したり、採点のポイントを提示したり、また
一昨年から標準解答例を提示したり、昔からすれば随分親切になってきたと思う。
でも、何かしっくりしないなぁ。どの欠点に対して、又どの違反に対して何点減点か分からないし。
標準解答例だけでは、受験者に事の善し悪しを勝手に想像させるだけとなっている。詳細の採点基
準が有るので有れば示して欲しいしなぁ、いや、それよりも課題文の元となった計画案も示して欲
しいよ。勿論元案は数時間で出来る者とは思わないが、それでも見てみたい。
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◆今回涙を呑まれた方、また学科から再挑戦される方にとって、発表された2つの標準解答例から
自分なりに何かを感じ取るより仕方がないですね。
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